知ってるようで知らない!? 日本と世界のログハウスHistory 【その③ ログハウスはどこで生まれた?】

世界で最初に造られたログハウスは、どこにあるのだろうか? 森林地帯では、かなり昔から用いられた構法であることが想像できるので、正確にはわからない。しかし、紀元前1500年に建てられたログハウスの遺構が見つかり、現在のところ、これが一番古いログハウスと見られている。

文/押田雅博

森林地帯の住居としてログハウスは合理的

鉄器時代後期のログハウス(オーストリア)、アスパルン考古学博物館。紀元前800年(『世界の民家 住まいの創造』では800年前となっているが、鉄器時代なので紀元前800年と思われる)

世界で最初に建てられたログハウスは、どこにあるのだろうか? ログハウス好きならばだれでもが興味を持ちそうなテーマであるが、実際のところはよくわかっていないというのが、本当のところだ。 人が住まいを建てようと思うと、まず住みたいと思う場所で多く産出する材料を使う。石が多く採れるところには石の住まいの文化があり、土が多く産出する場所では土をそのまま使うほか、焼いてレンガのようにして使っている。森林地帯に住まいを建てるならば、当然のごとく木を多く使った建物にするだろう。ログハウスは森林地帯を開拓し、伐った丸太を使って積み上げればそのまま家ができてしまうので、森林地帯の住宅としてはとても重宝がられた。森林は有史以前から地球を覆っていたはずなので、いつの間にかいろいろな場所で造られるようになったことが推察される。 ログハウス建築で有名なところは、スイス、北イタリア、オーストリアなどのアルプス地方、フィンランド、スウェーデン、ノルウェイなどのスカンジナビア地方、また、旧チェコスロバキア(現在のチェコとスロバキア)、ポーランドのカルパチア山地にも古いログハウスが残っている。スカンジナビア地方でログハウスが多く用いられたもうひとつの要因ともいえるのが、8~10世紀のヴァイキングの造船技術である。海洋民である彼らは他の国から木造技術を持ち帰り、ログハウスや造船づくりに生かしてきた。ロシアも17世紀までの住まいはすべてログハウスだったという。 アメリカのログハウスは、1638年に東海岸のデラウェアに上陸したスウェーデン人が、自国のログハウス構法技術をもたらした。先の通り、主に森林地帯を開拓していた者にとっては、ログハウスがもってこいの構法だったといえるだろう。独立戦争のころには、かなりの地域でログハウスが造られるようになっていた。エイブラハム・リンカーン第16代アメリカ大統領がログハウスで生まれたことはよく知られている。

川島宙次/著『世界の民家 住まいの創造』(相模書房/刊)

さて、それでは、世界で最も古いログハウスはどこにあるのだろうか? もちろん最初に造られたログハウスは現存していない。しかし、旧ユーゴスラビア(現在のスロベニアなど6カ国)では、紀元前1500年前に造られたログハウスの遺構が見つかった。この建物のことが掲載されているのが、川島宙次/著『世界の民家 住まいの創造』(相模書房/刊)である。大手の建築会社である大林組に勤めていた著者は、世界中の民家を訪ねてまわり、自筆のイラストでさまざまな民家を詳しく紹介している。その本の中で現在までの記録のなかでは、最も古いであろうログハウスが記載されている。

紀元前1500年のログハウス(ユーゴスラビア・バルカン半島)、アスパルン考古学博物館

紀元前1500年のログハウスの遺構が、旧ユーゴスラビアのバルカン半島で見つかり、アスパルン考古学博物館に復元されているという。建物の大きさは、大きさは長さ12.2m、幅5.87m、高さ5.6mとそこそこ大きな建物だ。まだノッチを刻む道具や技術がなかったのか、柱を立てて、柱の間に丸太をはめ込む造り方になっている。今でいうピーセンピース構法である。同博物館内には鉄器時代後期の紀元前800年にオーストリアで建てられたログハウスも復元されているという。この頃になると進化をして、現在と同じようにノッチが刻まれ、室内も前室、後室のふた部屋に分かれており、住みやすくなっている。

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