東海岸の田舎家を意識した美しい佇まいの別荘で心身をリフレッシュする

「自然が大好きで木の家を建てて暮らしたい」。そんな思いを実現したオーナーの暮らしぶりをのぞいてみた。思い思いに楽しむ自分流のナチュラルな暮らしと、そんなライフスタイルに似合う素敵な住まいを紹介しよう。

山梨県・Uさん、Nさん

設計・施工/(株)ビ・ボーン

ウッドシェイクで覆った外壁が個性的な味わいを生み出す

樹々に囲まれた環境に佇むUさん、Nさんの別荘。敷地はもともと山林で、Uさんが1年ほどかけて自力で伐採した

カメラマンのUさん、インテリアデザイナーのNさんご夫妻が所有する別荘は、実に個性的だ。屋根と壁をウッドシェイクで仕上げた外観は、おとぎ話から抜け出してきたような独特の雰囲気がある。「アメリカ東海岸の田舎家のイメージで造りました」とUさん。設計・施工を担当したのは、ログハウスを中心に幅広く木の家を手がけるビ・ボーンだ。ご夫妻はイラストや自作の模型を使って同社に住まいのイメージを伝えたという。 ユニークなのが、間取りや使い勝手よりディテール重視で家づくりを進めたこと。前述のウッドシェイクもそのひとつだ。また、ウッドデッキを覆う深い屋根には、あった方が美しいという理由から、ダミーの太い垂木をつけた。

壁の全面にウッドシェイクを張った外観が個性的。独特の雰囲気から、ご近所から「お菓子の家」と呼ばれているそう

設備やパーツ類は、Nさんが仕事のツテをフル活用して入手。家づくりを始めた2012年当時はまだ国内で市販されていなかった海外のタイルや照明器具などを輸入して随所に取り入れている。アイアンの金具やキッチンのアイランドカウンターは、知り合いの職人に手作りしてもらったものだ。また、室内空間全体に落ち着いた雰囲気があるのも特徴。「新築に見えないように、見える木部はすべてエイジング加工した材で覆ってもらいました」とNさん。洋書のような洗練された空間は、インテリアのプロの美意識が存分に生かされている。「いろいろと注文しても、いやがらず対応してくれたビ・ボーンさんに感謝です」(Nさん)。

端正な印象のリビング。シンメトリーに配した壁の照明は、アメリカのデザイナーがデザインしたもの。家具類もみな風情があって美しい
まるで洋書に出てくるような洗練されたキッチン。3連の上げ下げ窓もおしゃれだ。床はトラバーチン(大理石)敷きにした

この家が完成してから9年。ウッドシェイクの屋根は灰色に変わり、ますます味わい深くなった。当初はゴルフの拠点にするつもりだったが、今では庭仕事や薪づくり、家のメンテナンスが楽しみに。緑豊かな環境で体を動かしたり、景色を眺めながらのんびりすることが、忙しい日々の大切な句読点になっている。

【  Detail  】

≪リビング≫

リビングの一角にある、絵になるコーナー。室内のインテリア小物は、Nさんが仕事で扱うアイテムの中から好きなものを集めた
左/LDKと2階の寝室がひとつながりになったのびやかな空間は、実際の面積以上の広がりが感じられる 右/通し柱はエイジング加工した無垢の板でカバーしている。新築なのに新築に見えない空間を目指した
シャンデリアはベルギー製のアンティーク

≪キッチン≫

左/アイランドカウンターはNさんが設計し、仕事でつながりのある家具職人に作ってもらったもの。人工大理石の天板はお菓子づくりに重宝している 右/レンジフードは市販品に木製のカバーをつけておしゃれに演出。キッチン本体はイケア製を自分たちでペイントした

≪サニタリー≫

バス、シャワー、洗面、トイレを集約した美しいユーティリティ。置き型のバスタブはアメリカのコーラー社製。猫脚ではなくモダンなデザインのものを選んだ
左/洗面台を使う際に、ちょうど外が眺められる位置に窓を設けた 右/シャワーブースのカーテンを吊るリングは、知り合いの職人に作ってもらった特注品。ドアは、不思議なことにリビングの階段に通じている。実はこれ、別荘をハウススタジオとして使う際に、階段からカメラでバスタブを狙いやすいように設けたもの。しかし、実際にそのアングルで撮影したことはまだないという 
微妙な凹凸があるタイルが生み出す陰影が印象的。施工時は目地に工夫が必要で、職人に説明しているうちにNさんも一緒に塗っていたそう

≪寝室≫

左/屋根の傾斜が間近で、ほど良いこもり感がある寝室。天井のペンダント照明はアンティークだ。「ここで寝ていると、屋根から鳥の足音が聞こえます」とUさん 右/2階の寝室は、東側の一部をシェッドドーマーで持ち上げて居住性と採光をアップ

≪外まわり≫

左/シェイクはランダムに張って変化をつけた。揃えて葺いた屋根と好対照だ 右/外壁の角は、シェイクの小端が交互に見えるように張ってある。これもNさんのこだわり
左/枕木のアプローチはUさんの作 右/間口いっぱいに設けたウッドデッキは、すべて屋根に覆われている
連続する太い垂木は、実は構造上必要のないダミー。当初はなかったが、のっぺりした印象を変えたくてあとから追加した 
リビングの大きなフレンチドアを覆う、古風なバーンドア(納屋風のドア)。アイアンの取っ手や錠前は知り合いの職人に作ってもらったもの
バーンドアの滑車とレールは、Nさんがアメリカから個人輸入。余分な装飾がなく実用に徹した「用の美」が感じられる
Uさんが自作した小屋。中には庭仕事の道具がしまってある 
こちらは、もともとはバイクガレージにする予定でビ・ボーンに建ててもらった小屋。今では工具類の収納場所と工房として使っている

【DATA】 ●使用目的/別荘 ●家族構成/夫婦 ●主要構造材/パイン ●ストーブ/バーモントキャスティングス アンコール ●敷地面積/654.04㎡(197.85坪) ●床面積/1F 64.77㎡(19.59坪)、2F 25.61㎡(4.75坪)、延床面積 90.38㎡(27.34坪) ●総工費/3500万円+税