手がかかるからこそ愛おしい。薪ストーブと暮らす喜び
東京都・田中さん 取材協力/アペント(株)
薪づくりにこだわって自分だけの火を楽しむ
朝、ストーブに薪をくべることから田中さんの一日は始まる。よく乾燥させた薪からオレンジ色の炎が上がり、炉内に火がまわると室内にじんわりと熱が伝わっていく。
「薪ストーブにかかわるすべての手間が喜び。僕は特に薪づくりにこだわっています」と田中さん。敷地内には薪小屋があり、複数の樹種が保管されている。 薪ストーブ導入にあたって大きな課題となるのが、こういった薪をいかに入手するかということだ。
「僕は自分で割りたかったので、近隣の材木店や造園会社から譲ってもらうことに。どんな木が来るかわからないから、いつも樹木図鑑を片手に木と向き合っています」
譲ってもらった原木は、チェーンソーで適度な長さに切り揃えてから斧で割る。燃え方や火持ちの良さなどに考えをめぐらせながら薪割りをする時間は至福の時だ。「薪割りもくべ方も、作戦を練るのが楽しいんです。火が入ればコンロにもなるし、炎のゆらぎやはぜる音は心から落ち着いた気持ちにさせてくれる。単に暖房器具というだけではないところが、薪ストーブの魅力そのものなんだと思います」
冬の間、薪ストーブの前はいつも家族が集まる場所だ。朝は子どもたちが着替え、夜は赤くなった薪を眺めながら一家団らん。ストーブの窓から見えるのは、見飽きることがないエンターテイメントだ。
取材・文/藤屋翔子、写真/武田賢士郎