ラスティックな個性派住宅が完成

古い別荘を大胆にリノベーションした加藤邸。木や石のザラザラ、ゴツゴツとした質感が楽しめる、ラスティックさを前面に出した佇まいは、ログハウスに匹敵する存在感にあふれていた。

長野県・加藤さん

設計・施工/(株)JIN

贅沢にレッドシーダーを使いログハウス調の空間が完成

玄関からすべてオープンになった新しい間取り。窓の外に広がる豊かな自然が何よりの癒やしで、カーテンもつけていない

中古の別荘を自宅用にリノベーションした加藤さん。木の家の魅力を知ったのは、若い頃に訪れたカナダでのこと。ログハウスに滞在し、木に囲まれた空間の心地良さを知った。以来、「いつかスノーリゾートに木の家を建てて、好きなスノーボードを楽しみたい」という夢を持つように。その夢をリノベーションでかなえることとなった。 「築28年でしたが、建物の状態が良かったので、窓枠や必要最低限の構造はそのまま」。一方で、大胆に変えたのは間取りだ。キッチンや個室など、スペースを分けていた壁を取り払い、1・2階とも仕切りのないオープンな空間に造り変えた。内装はログハウスを意識し、壁や天井をラフな表面仕上げのレッドシーダー張りに。ザラリとした手触りは、ラスティックな質感を得意とするJINらしい仕上がりだ。木そのものの良さが、見た目や香りのほか、手触りでも味わえる。壁は1×8材、天井は1×4材と、使う板の幅を変えることで、見た目の変化をつけた。レッドシーダーは外壁や浴室の壁面など、家のほとんどの部分に使用している。

左/壁を引き立たせることを重視して照明を設計 右/壁面はラフな表面仕上げのレッドシーダー張り

オープンで装飾の少ない空間だからこそ、パーツや個々のインテリアが引き立つ。埋め込み式の照明は、まぶしさが少ないグレアレスを採用。明るい光で空間全体を照らすのではなく、光が広がる範囲を最小限にとどめた。また、照明の多くを壁際に埋め込んだのも特徴。壁に反射した光がやわらかく空間を照らし、特に夜は落ち着いた雰囲気が楽しめる。微妙な凹凸がある木や石の壁がほのかな光に浮かび上がり、シックなインテリアも含め、大人ムードが漂うLDKが出現するのだ。

対面タイプのキッチンは家族と会話が弾む

「建築中は何度も来て、作業を手伝いました。全部建て替えた方が早いくらいでしたが、自分の想像通りにできたのがうれしかったし、やってみて良かったです」と、納得のいく家づくりに満足している。

【  Detail  】

≪リビングダイニング≫

壁の石はクォーツストーン。照明が当たると陰影が際立ち、シックな雰囲気に。ストーブはモルソー
【BEFORE】以前のリビング。一般的な壁紙とフローリングの内装で、特別目を引く要素は乏しい
光源は埋め込みやブラケットなど最小限に。リビングは中央に3連の照明があるのみ
個室に分かれていた名残の梁や柱が残るLDK

≪2階ファミリールーム≫

2階も2部屋あった状態から間仕切り壁を撤去。奥が就寝のスペース、手前は子ども用のスペースで、屋根裏にはロフトも設けた
左/屋根の傾斜がある分収納力は下がるが、2階の壁一面にクローゼットを設置 右/ロフトへの階段。朽ちた木はアリが巣を作っていたが、自然とともに生きることをよしとしてそのままに

≪ロフト≫

書斎としての用途を考え、ロフトにPC や各種機材を設置

≪サニタリー≫

左/レンガ風のタイルを張った洗面脱衣室。照明つきの鏡の演出効果も美しい 右/浴室は壁と天井をレッドシーダー張りにした。窓を追加し、2方向の景色を楽しめるように

≪外観≫

外観はダークブラウン×ブラックの渋い配色。自然の移ろいを感じられる環境もお気に入り
天然塗料を塗った外壁は、10~20 年を経て美しいシルバーに変化していくのを楽しむ。バルコニーはこれから塗装予定

【DATA】 ●使用目的/住宅 ●家族構成/夫婦+長女、次女 ●工期/2022 年8月~2024年2月 ●構造/木質系パネル構造、地上2階 ●外壁の塗料/㈲小川耕太郎∞百合子社 ウッドロングエコ(2回塗り) ●内壁の塗料/なし ●基礎/布基礎 ●ストーブ/モルソー 2110CBUSA ●床面積/ 1F 53.58㎡(16.21坪)、2F 41.60㎡(12.58坪)、延床面積 95.18㎡(28.79坪) ●設計・施工/㈱JIN  https://jin-inc.co.jp/ TEL 0267-31-6869

取材・文/魁生佳余子、写真/関根おさむ