木に囲まれて暮らす。ブッシュクラフトの達人が過ごす家族との幸せな時間

ログハウスは建てて終わりではなく、生活の楽しみを受けとめ、ふくらませる大きな器のようなもの。家族と一緒に歴史を刻み、より魅力的になってく。オーナーによってそれぞれ異なる好みを反映して生まれた魅力的な住まいと、その暮らしぶりを紹介しよう。

長野県・川口さん

設計・輸入・施工/高原都市開発㈱

住んで驚いたログハウスの快適性

お父さんがおこしてくれた焚き火を前にして「あたたかーい」と喜ぶ子どもたち。このデッキでバーベキューを楽しむことも多い

川口さんご一家は、自然が豊かな環境を求め、埼玉県から軽井沢へと移住してきた。この日、ご主人の拓さんは「雨ですが少し肌寒いので焚き火でもしましょう」というと、手慣れた様子で焚き火台をセットし、集めた薪にマッチ1本であっという間に着火。ふたりの娘さんと一緒に仲良く火を囲んで笑顔を見せた。その手際の良さは見とれてしまうほどだが、それもそのはず、川口さんは日本のブッシュクラフトの第一人者として知られる人物なのである。

ナイフで木の表面を削いで表面積を増やし、より着火しやすくするフェザースティックを作る。ご主人にとっては手慣れた作業だ

ブッシュクラフトとは、無駄な装備を極力持たず、木の枝やつるなど、自然の中にあるものを上手に利用して野営する遊び。その達人である川口さんが、ログハウスを選んだのは当然だったのだろう。「やっぱり木に囲まれているのが本当に気持ちいいですし、ほど良い気密性も好みでした」と川口さん。実際にログハウスに住んでみると気密性が低いわけでもなく、その快適さに驚かされたそうだ。

リビングとダイニング合わせて約20 畳もあり広々。家族みんなでこのスペースで過ごすことが多い。子どもたちにはハンモックが人気

「夏は冷房なしでも涼しいし、冬はあたたかい。外の気温がマイナス12℃でも、夜薪ストーブに薪を入れておけば、翌朝室内は12~13℃あって楽に過ごせます」 ログハウスは、地元のメーカー、高原都市開発に依頼。スタッフの人柄が信頼できると思えたのが決め手だった。「値段が安い中国製ログが選べるのも助かりました。低価格でも品質は高いですし、これがなければログハウスに住むという夢はかなえられませんでした

2階の書斎で仕事中のご主人。「ホームページの管理やユーチューブなど、どうしても事務仕事が増えてしまって」と苦笑い

間取りはほとんど奥さまが考えた。バスルームを2階に設けたりするなどかなりユニークな設計だが、完全自由設計で大きな制約もなく、メーカーは要望に迅速に応えてくれたという。 「このログハウスで家族と過ごすのが楽しくて、どこに行ってもやっぱりわが家がいちばんと思ってしまいます」と、焚き火を前ににこやかに話す川口さん。夢だった森の中の住まいで、幸せな暮らしを満喫しているようだ。

【  Detail  】

≪外観≫

グレーとホワイトで北欧モダンなイメージにしたログハウスの外観。2階の妻壁部分までログ材を積んだゲーブルエンドだ
左/外壁塗装もご主人がDIYで行った。塗料はオリンピックだ。大きめの庇がかかった玄関ポーチは、雨や雪が降っていても、出入りするときにぬれず便利 右/ログ材は、シベリア産のパインを中国で加工した3層ラミネートのマシンカット材。企業努力によって、コストを抑えながら高品質を実現している

≪玄関≫

左/木の香りが体を包み込んで迎えてくれる玄関ホール。右側の手前には、荷物をたっぷりしまえるウォーク・イン・シューズクロークがある 左/玄関ホールに洗面所を設置したプランもユニーク。帰宅してすぐに手を洗うことができる。黒いボウルがおしゃれだ

≪リビングダイニング≫

キッチンに立つと、ダイニングとリビング、そして右奥にあるキッズルームまで見渡すことができる。料理をしながらでも子どもたちを見守ることができ、安心だ
6人以上座れる大きなダイニングテーブルはDIY。友人にアイアンの脚を作ってもらい、足場板を天板に加工して取りつけた
薪ストーブの上は吹き抜け。暖気が上に抜けないかが心配だったが、1階もあたたかだという
室内の1階の壁は、ホワイトで塗装してモダンに。2階はナチュラルな雰囲気にするために木肌の色をそのまま見せている

≪アトリエ&キッズルーム≫

左/奥さまのアトリエ。奥さまはハンドメイドのアクセサリーなどを製作・販売するアトリエショップ「Rustic Luxe」を開いている 右/習い事のピアノや勉強机があるキッズルームを、目が届く1階のリビング奥に設けた

≪キッチン≫

窓から明るい光が入るキッチンは、コンロとシンクをダイニング側に向けた対面式。奥行きが3.5mもあり、広くて使いやすい

≪2階≫

明るさたっぷりの2階ホール。2階にはサニタリーと3部屋の個室がある
見晴らしのいい個室。将来は子ども部屋として使う予定だ
ご主人の書斎の一角。若い頃からカナダやアメリカに渡りサバイバル技術やトラッキング技術(野生動物を追跡する技術)を学んできたご主人。本棚にはアウトドア関連の洋書が並ぶ

【DATA】 使用目的/自宅 ●家族構成/ 夫婦+子ども2人 ●使用ログ材/シベリヤパイン(W 11.5 × H17.5cm)3層ラミネートログ ●ストーブ/ドブレ「760WD」 ●敷地面積/ 968.87㎡(293.08 坪) ●床面積/ 1F 71.04㎡(21.48坪)、2F 64.37㎡(19.47坪)、延床面積 135.41㎡(40.96坪) ●総工費/ 2500万円(税込)

取材・文/原 太一、写真/関根おさむ