【Since2001】趣味を心ゆくまで満喫する自分だけの博物館

山梨県・川辺さん

手を入れすぎず手を抜かずハンドカットらしい仕上げに

妻壁に据えられた、湾曲した梁が印象的な川辺邸。家の顔になる部分なので、オリジナルなデザインを採用している

川辺さんが別荘を建てる場所としてこの土地を選んだのは、若い頃に八ヶ岳高原で不動産販売をしていたことから土地勘があり、知人も多くいて、そして何より環境の良さにひかれたからだった。知人の紹介で信頼のおけるログビルダーに出会い、ログハウスの建築をお願いすることに。当時住んでいた社員寮がマシンカットのログハウスで、薪ストーブもあり、真冬でもあたたかく快適だったことから、当初からログハウスを意識していたという。ハンドカットを選んだ理由は、「ダイナミックさが欲しかった」からだ。

玄関を入ると広がるファーストビュー。太い丸太で構成された高い吹き抜け空間の迫力は圧巻。一瞬で非日常の世界へと切り替わる

「どこかにデザインカットが欲しい」「ロフトは趣味の野球メモラビリアと古いおもちゃの展示をしたい」「天窓から夜空を見て眠りたい」「広いウッドデッキでバーベキューを楽しみたい」「薪ストーブを設置したい」……そんな当初の夢は、すべて実現することができ、特に薪ストーブを楽しみながらお酒を飲んでいるときは、優雅な気持ちになれるそう。現在は会社を経営をしている川辺さん。2年に1度ほど、ウッドデッキでバーベキューを楽しむ社員旅行を企画し、本人は焼き役に徹して楽しんでいる。

外国の家に遊びに来たようなカントリー調のリビング。公園などにあるログのピクニックテーブルが室内にあってもマッチしている

このログハウスの魅力は、内外ともに丸太の素材としての魅力をそのまま味わえるように、手を入れすぎず手を抜かず、という絶妙な具合に仕上げているところだろう。ログ組みそのものはオーソドックスな田の字形が基本ながら、玄関は田の字から少し延長して屋根方向を変えることで家のボリューム感やデザイン性が増しているのがユニークだ。

木立に埋もれるように立つ川辺邸。洋瓦で仕上げた屋根がハンドカットの躯体とマッチして、重厚な雰囲気を醸し出している

外壁は何度か塗装をしてかなり濃い色になってきた。また、室内側は塗装をしていないので木の色の変化が進み、新築時とはひと味違う色合いになっている。「太い丸太、それぞれ形、表情、太さ、色合い、すべてが異なるアンバランスなものが積み重なってひとつのバランスの取れた家として成立しているのがいちばんの魅力ですね」と語ってくれた。

【  Detail  】

≪外観≫

左/デッキのフェンスをチェアにすることでスペースを有効的に活用 右/一本一本異なる大きさと形のログが重なり合うみごとなログワーク。腐りや変色がないことが、適切なメンテナンスが行われてきたことを物語る。外壁は、新築当時より大分濃い色になった

≪りピンクダイニング≫

キッチンの壁がそのままカウンターに。カウンターの上部はアーチカットか施してあり、いかにもハンドカットらしい
室内側のログ壁は無塗装。時間とともに木肌の色が濃くなり、新築時とは異なる趣が生まれてきた
壁から突出している太い丸太の梁もログハウスならではの意匠。スピーカーは後づけが困難なため、設計時から計画していた

≪ロフト≫

ロフトに設けた、希少な野球グッズコレクションの展示スペース
この趣味の空間で友人とグラスを傾けるのが至福の時。野球談議に熱が入る
デッドスペースになりがちなロフトの隅のコーナーを使って、趣味のおもちゃコレクションを陳列するショーケースに。古今の貴重な品がずらり
名選手のサインボールはアクリルケースに入れて陳列。趣味をとことん満喫できるのもログハウス別荘の楽しさかもしれない

≪サニタリー≫

左/浴室はログ壁を生かすハーフユニットバスを採用。シャワーホルダーや操作盤を直接ログ壁にとりつけている。20 年経ってもきれいなまま維持しているのはおみごと 右/狭い空間だけに、太い丸太が迫るトイレは独特の圧迫感が。しかし、ログ好きにはたまらない醍醐味ともいえる

【DATA】 ●使用目的/別荘 ●竣工/ 2001 年4 月 ●使用ログ材/ダグラスファー(φ約30cm) ●床面積/ 1F 78㎡(23.5坪)、2F 48㎡(14.5 坪)

取材・文/編集部、写真/関根おさむ