[1]女子が木を伐るところからログハウスを造る DIY女子部 <1.木の伐り方[ 前編 ]>

女性が中心になってポスト&ビームのログハウスを造るプロジェクトがスタート。家づくりと同時に、荒れた杉林の整備と地域振興まで実現しようという野心的な試みがはたしてどうなるのか? プロジェクトの進行とともに、家づくりのノウハウも紹介していこう。

文/木こりの源

NPO法人ふるさとネッツ理事、木こりの源です。現在、弊団体では長柄町で「ミス日本みどりの女神」「ヨムーノDIY女子部」等、女性が中心になって家づくりに挑戦するプロジェクトを行っています。

ミス日本みどりの女神・野中葵さん(左)、井戸川百花さん(右)と長柄町町長
ヨムーノDIY女子部 左からヤギコさん、まっすー部長、はーちゃん副部長、ゆっこさん

ログハウスのセルフビルドで荒廃杉林問題解決と長柄町を盛り上げる事を目的として、SDGsの「目標11:住み続けられるまちづくりを」「目標15:陸の豊かさも守ろう」「目標17:パートナーシップで目標を達成しよう」につながる活動をめざします。

まず、弊団体では、セルフビルドサポーターと言う民間資格を作り、ポスト&ビームログハウスのセルフビルドを体系化しております。これに乗っ取りプロジェクトの進行と家の造り方を連載していきます。 ポスト&ビームログハウスとは、積み上げ式のログハウスは違い、メインとなる柱と梁等の構造材に丸太を使った、在来工法に近い造りのログハウスです。

各問題の説明は後回しにして、ログハウス造り活動を紹介して行きます
木こりの源がセルフビルドしたポスト&ビームログハウス

さて連載最初の今回は、建材に使う杉を用意するために、木の伐り方を学んで行きましょう。これから造る家は、ロフトを入れて100㎡くらいの建物です。

この位の建物で、短い丸太も合わせて約80本の丸太が必要となります。これを伐り出すのに約600㎡の杉林を整備する事になります。

我々が木を伐り出す所は、放置されている杉林なので、ジャングルの様に立ち入れないほど植物が生えてしまっています。この状態だと動物の住みかになり獣害の元になります。これを整備しながら木を伐り出します。

立ち入れないほど荒れた杉林、多くの杉林がこの様な現状

木を伐るには、まず下草刈りです、樹間に生えている竹や小径木等を手ノコやナタ、刈り払い機、チェーンソー等で伐り、木を倒すスペースを作らねばなりません。

風倒木等で掛かり木になっている時等は経験や技術が必要で、刈った草や竹等をまとめるのに、人手や重機があると効率よく作業が進みます。

この日は早稲田大学の学生5人も手伝ってくれ、計7人で整備作業
一日人の手が入っただけで綺麗になる、数の力は偉大なり

樹間にスペースが出来たら、材の搬出時の事も考慮して、どこから伐って行くかプランを立てます。重機は費用がかかり毎回入れられませんので、基本的に人力で伐木していきます。

まず対象木の周りの草の伐り残し等を処理し作業の為の足場を整えます。

また、伐倒方向に影響を及ぼす可能性がある、立木に伝っているツタなども排除しておきましょう。

下草刈り、ツタの排除ができて、初めて伐木作業となります

プロフィール

「木こりの源」こと井上源太郎

東京都出身。株式会社ユート代表取締役。玄米菜食カフェの経営、長柄町役場「移住定住コーディネーター」、森のスポーツパチンコ協会副理事長など幅広く活躍する。2017年よりNPO法人ふるさとネッツの理事となり、多くの地方がめざす地域創生を「林業」から実現する日本初のモデルとなるべく邁進中。 「荒廃林を無駄にしない世界を作りたい。でも、効率が悪いことをしても意味がありません。僕は、眠っている森林資源を家づくりを通して“暮らしに役立つもの”に変え、楽しみながら、かしこく使い切る方法を考えていきたいと思っています」

NPO法人ふるさとネッツ: https://furusatonets.net/

木こりの源のつぶやき

● セルフビルドサポーターとは

セルフビルドサポーターは、NPO法人ふるさとネッツが認定する民間資格です。セルフビルドサポーターの使命は、セルフビルドを通じて、林業の啓蒙活動をする事です。杉を伐って森林整備する所から始まって、丸太を手刻みし柱や梁を作り、それを組み立て家を作って行きながら自然との共生の仕方を考えていきましょう。木を伐る技術や家を建てる技術を習得して、セルフビルドしたい人のサポートをしながら、林業に目を向けるきっかけを作って行くのが、セルフビルドサポーターです。

●植林杉問題

戦後、住宅の建築需要を見込んで、国策として杉を植える事を推奨しました。その後安い外国材が輸入される様になり、国産材の需要は減り、大規模に国産材を生産しているエリアでも補助金が投じられやっと経営出来ているのが現状です。 それ以外、特に都市近郊の小規模森林いわゆる里山では、林業が経済的に成り立たない為に植林された杉林は放置されて荒れ果てているのが実態です。この荒廃した杉林は、台風等で電線や民家に倒れたり、道をふさいだりして、大停電や復興を遅らせる原因となります。経済的な要因から伐り時になった杉が、まだ伐られないで放置されています。また、伐り手がいないのも深刻な問題です。 経済的に解決できない問題なので、楽しむ事に発想を転換する事が重要です。木の伐倒を家を建てる事を最終目標に、スポーツの様に楽しみながら伐り手を増やす事も目指して行きます。

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