暮らしやすい間取りのコツ [ 前編 ]

暮らしやすくて無駄がない。そんな理想の間取りを実現するには、どんなことに気をつければいいのだろう?プランニングに定評あるログメーカー3 社に、間取りづくりのコツを聞いてみた。

取材協力(株)TALOインターナショナル Yさん、(株)ホンカ・ジャパン 平井邦明さん、 夢木香(株) 谷本恵未さん

プランニングの方法は、下図のように大きく3つのパターンに分けられる。

「時間がない、プロにおまかせという方は基本プランのままでもいいかと思います。建物のイメージは少しぼんやりしているけれど、こだわりも詰め込みたいという方は基本プランをアレンジする方法、建てたいログハウスのイメージがしっかりできている方なら自由設計がおすすめです」と夢木香の谷本さん。 また、TALOインターナショナルのYさんは「せっかくログハウスを建てるなら、基本プランを自分に合わせてアレンジしていただいたり、自由設計で建てていただくことをおすすめします。当社では設計料をいただいていないので、割高にもなりません」と教えてくれた。

3社に各スペースに必要なおおよその面積を教えていただいた結果をまとめると、下の表の通り。

ただし、谷本さんによると、ハンドカットの場合は少し変わるそうだ。「部屋の大きさは壁の中心線であらわすので、ログ壁の厚さを考慮する必要があります。一般的な6畳の部屋をイメージするなら、図面上では8畳くらい必要です」

「今の生活で不便に思うこと、改善したいことを箇条書きでまとめておくといいですよ。資金計画や土地探しなど、不安なことも具体的に相談できるようにしておきましょう。土地が決まっている場合は、測量図や写真など、土地の資料があると話が進めやすいです」とホンカ・ジャパンの平井さん。 「最初は建物のサイズや間取りのことはあまり考えず、いいなと思った写真をインターネットや雑誌で集めてください。言葉よりイメージが共有しやすく、気に入るプランに早く出会えると思います」(谷本さん)、「完成後にどのようなライフスタイルをイメージしているかがわかると、プランづくりがスムーズです」(Yさん)というアドバイスもいただいた。

ログハウスは制限が多い建物ではあるが、構造計算を行えば、コストは増すが複雑な間取りや大きなログハウスも建築可能になる写真提供:夢木香(株)

「一般住宅と比べると改築や増築が難しい、ログの交差部に20cmの突出部が生じる、窓やドアは壁の端ぴったりに作れないなど、ログハウスならではの制限があることは知っておいたほうがいいでしょう」とYさん。 「許容応力度計算をするか、ダボ計算をするかで建てられるプランが変わることも知っておいてください」というのは谷本さん。「ダボ計算なら、小屋裏利用の2階建ての場合、ひとつのログの区画が30m²以下など、規定の数値内にすることで、価格を抑えながらログの強度を生かした設計ができます。一方、費用はかかりますが許容応力度計算によって安全性を証明できれば、規模を大きくするなど、より自由度の高い設計ができますよ」と教えてくれた。

「日当たりや周囲の景色、通行人の目線も考慮しながら、室内から見える景色を想像し、LDKや玄関のパブリックゾーンの配置をイメージ。そしてパブリックゾーンを中心に、水まわりや居室を配置していくといいと思います。このときに実生活のあらゆるシーンを想像しながら頭の中で室内を歩き、収納や照明、スイッチの位置も考えてみましょう。イメージするのが苦手なら、立体図面や過去の施工写真を見せてもらうといいですよ」と平井さん。

後悔しないプランニングのためには、完成してからの暮らしをできるだけ明確にイメージしてプランを考えることが大切。ログメーカーがこうした立体的な図面を作ってくれるのであれば、より具体的なイメージがわくはずだ図面提供:(株)ホンカ・ジャパン

そして「階段の位置も家族構成やライフスタイルで変わります」とYさん。例えば子どもがいるなら帰宅がわかるよう、リビングに、来客が多ければ人目を気にせず2階に上がれるよう、玄関から近い位置にと、階段を設置する場所についてもさまざまな提案をするそうだ。

薪ストーブの設置場所については、吹き抜けだと暖気が上階に抜けてしまうので、1階の天井がある場所が望ましいと皆さん口を揃える。「北側や建物の中央に配置すると家全体があたたまりやすい」(Yさん)、「デッキから続く土間スペースに置くと、薪の補充がしやすく便利」(谷本さん)という意見もいただいた。

浴室の傷みを防ぐにはユニットバスがベストとこれも皆さんの意見が一致。それでも木の風合いを求めるなら「ヒノキなど耐水性に優れた材で仕上げることもあります」(平井さん)、「浴室部を在来工法にする方法もあります。ログ壁あらわしなら換気設計をしっかりしたり、耐水性のある塗料を塗ったりもします」(谷本さん)とのこと。

スペースに余裕がない場合は、壁の凹みを使ったニッチ収納が便利。こんなアイデアで暮らしはもっと快適になる写真提供:(株)TALOインターナショナル

「収納を考慮したプランは問題なく作れます。ただ、プランが固まってしまってからだと収納を加えにくいので、最初から検討することが大事」と谷本さん。Yさんも「階段の下の空間やグルニエ、ニッチをうまく活用したりすれば、便利な収納スペースを作れます」と話す。 また、「限られた空間、予算の中で収納を増やすなら、寝室はベッドが置ける最小限の広さにする、造りつけのクローゼットをやめて家具にするなど、各空間の広さの割り振りを調整してスペースを作り出す方法もあります」と平井さんはアドバイス。

構成・取材・文/原 太一

関連キーワード