本物なのに短工期でローコスト! タテに角ログを使うパネルログがさらに進化中

角ログを縦に並べて使用するという新発想の「パネルログ」に、省力化・ローコスト化に配慮した新しいタイプが誕生。これを含む4棟のモデルハウスが公開中だ。

設計・施工/(株)芳賀沼製作

セトリングを克服するパネルログが新工法を展開

モデルハウス1 の1 階LDK。借景に合わせて、大きな額縁窓をセトリングへの配慮なしで設置可能

ログを横に積み上げると、時を経るとともに沈み込みが発生する「セトリング」。それを見越した対応策が必要になり、その分コストも上がっていく一面がある。芳賀沼製作が開発したのは、セトリングを克服するために、角ログを縦に並べて使用するという新発想で生まれた「パネルログ」という工法だ。本誌の前号にてパネルログで作られた住宅施工例を紹介したところ、大きな反響があった。

モデルハウス1 はキューブ型パネル住宅、2 はロフトつき平屋、3 はBOX × BOX タイプ、4 は倉庫タイプ。合計4 種が新たに展示されており、要予約で見学可能

最近、4棟のモデルハウスが建ったという情報を得たので、再び南会津の地を訪れた。ここでは、新しい工法で建てられたモデルハウス1の「キューブ型パネル住宅」を主に紹介しよう。 建築面積9坪、延床面積18坪のコンパクトな箱型の家で、老夫婦ふたり、または夫婦+子どもひとりを想定。1階はLDKとサニタリー、2階は個室という間取りだ。「技術を下げずにコストを下げる」をコンセプトに、徹底したコストカットをはかっている。 前号で紹介したパネルログは、軸組工法による土台や柱などの枠を作ってから、壁となるパネルを吊り上げて柱と柱の間に差し込む工法だった。 それに対して、今回の「キューブ型パネル住宅」は枠を組んだ外側に壁用のパネルを張りつけていく点が異なる。2階までカバーする高さ4mものパネルログを使うので設置がより容易となり、その分コストを圧縮できる。内装に柱の凸部ができるが、それほど気になるものではない。天井、壁、床は総パネルログ。あたたかみのある北欧風インテリアで居心地がいい。ちなみに角材に厚みがあるため、1階天井と2階床を兼用できるのもコストカットにつながっている。またセトリングが発生しないため、ベンチや棚板、階段などを壁に直接設置でき、空間の有効利用が可能だ。

設計通りにカットされたパネルログを現場で張りつけるため、工期が短くなりコ ストカットできる。1・2 階の外周壁は4m 材を使用

「キューブ型パネル住宅」のモデルハウス1の価格は、この仕様で900万円~。宿泊体験ができるので、気になった人は予約を入れて1日過ごしてみてはいかがだろうか(※現在はコロナ対応のため、宿泊体験は一時中断しています)。

セトリングが起きないため、壁に直接棚やベンチの造作が可能( 造作家具はオプション)。置き家具を減らし、スペースを有効活用できる
断熱・保温性性能の高い塗料を施すことで、従来は外気温を伝えやすいとされる基礎コンクリートを内部空間に利用することが可能となった。1・2 階の壁を兼ねる4m のパネルログを使うことで施工コスト削減を狙う、というキーコンセプトに沿った仕様だ
断熱効果の高い塗料を、「コンクリート外側に塗ったもの」「内側に塗ったもの」「塗料なし」の3種類用意し、温度変化をデータ収集。さらなる 技術開発に向けて実験を重ねている

地元の森林資源である木目の美しいスギを無垢の角材として活用

105×112mm の無垢角材。サネ加工(凸と凹をつける加工)を施し、パネル化する際に隣り合う材同士がしっかりかみ合う工夫がなされている

セトリングが起きないパネルログの 基本的な構成

パネルログの構成モデル。角ログをビス打ちによってつなぎ合わせてパネル化し、柱や梁の間に設置して施工する軸組工法となる

【  Detail  】

≪モデルハウス1≫

モデルハウス1の2階はオープンなワンルームにしているが、間仕切りやドアを設ければ個室やウォーク・イン・クローゼットなどへのアレンジも可能
新しい工法の内装には柱の凸部ができるが、それほど目立たない
パネルログを1階天井、2階床に兼用して、ローコスト化を実現。角材は105mmの厚みがある頑強な造りのため、2階の足音が階下に響きにくい
パネルログは沈み込まないため、階段の踏み板を直接壁に設置することが可能。省スペースにひと役買ってくれるのもメリットだ

≪モデルハウス2≫

上2点/モデルハウス2の内観。セトリングしないため、ロフトの設置も容易
柱とパネルログは同じ素材の角材なので、探してもほぼ区別がつかない

≪モデルハウス3≫

モデルハウス3 は、アウトドア用のワークスペースとして利用できる。パネルログをあえて横に使ったデザインで、セトリングが発生するかテスト中でもある

短工期と快適さの秘密に迫る

パネルログは2種類の作り方がある。パターンAは、土台、柱を組んだあと、パネルログを吊り上げて柱と柱の間に入れ込み、桁・梁でふたをする。柱を同じ素材・サイズの角材を使えば内装がフラットになり、まったく目立たない。一方パターンBは、1階と2階の土台、柱、桁・梁まで組み上げてから、外側から張りつけて壁を仕上げる。大型パネルログの施工を実現し、コストカットをはかれるメリットがあるが、内装に柱の出っ張りが生じることも知っておきたい。いずれも現場作業が少ないため、工期が短いのが特長。セルフビルドにも挑戦でき、さらなるコストカット化も可能だ。

また、気密性・断熱性に優れるのも魅力。外気温と室温の変化をデータ計測したところ、左グラフのように一日の室温差が非常に小さいことがわかっている。

取材・文/長田節子、写真/松井 進、イラスト/(同)良品店 渡邉洋一