ピアノの音色が美しく豊かに響くすこやかな住まい

開放感あふれるリビングや趣味に没入できるアトリエ、心身を整える爽快なサウナまで、理想のログハウスに求めるものは、人それぞれ。譲れないこだわりを追求して、理想の暮らしを手に入れた人たちのログハウスを訪ねた。

長野県・小川さん

設計・施工/夢木香(株)

ログハウスの遊び心に感銘を受けた

ご主人が選んだというログ壁の色は、悩んだ末に北欧の古いログハウスを思わせる濃い茶色にした。景観に合う色にしたかったのだそうだ

長野県原村の閑静な地域に、片流れ屋根のシルエットが美しいログハウスが建っている。オーナーの小川さんご夫妻は、名古屋のご自宅とこのログハウスを行き来する2拠点生活を実践中。おふたりとも両地域でお仕事をお持ちで、週の半分をここで過ごしているのだそうだ。 「ほどほどに自然が多く、ほどほどにしゃれた店もある。高速のインターも近いし、八ヶ岳や甲斐駒ヶ岳の眺めもいいし、ここは本当にいい土地だと思います」と話すご主人。住まいにログハウスを選んだのは、奥さまの希望もあってのことだったそうだ。

縁なしの畳を敷いた小上がりは、ちょっと腰掛けるのにも便利だ。薪ストーブは少し手間がかかるが、それ以上の癒しが得られるという

「最初に住宅メーカーが集まる展示場を訪れたときには、どこに行ってもログハウスは手間がかかるからおすすめしないと言われました」と笑う奥さま。しかし、そこにあるモデルハウスが「建てたらそれで終わりの家」に見えてしまい、ログメーカーの夢木香を訪れたのだそう。 「何件か見学させてもらい、遊び心ある家づくりに感銘を受けました。これなら自分たちらしい住まいづくりができると思いましたね」

グランドピアノを置くために設けた空間は、コンサート会場のように音が豊かに響く。「ピアノも喜んでいると思います」と奥さま

家づくりでこだわったのは、まずグランドピアノを置くスペース。また、畳敷きの小上がりや広いトイレなど多くのリクエストをした。 「小上がりは大正解。オープンな家にしたかったので独立した寝室は造らず、ここに布団を敷いて休んでいます。朝目が覚めたとき障子をあけると美しい景色が見えて気持ちいい」とご主人はにこやかだ。 ヒノキを使ったログ材のさわやかな香りが満ちるログハウスは、こうしたオープンな間取り、高い天井、多めに設けた窓などの相乗効果で、どの場所も明るさと解放感に満ちている。このすこやかさは、おふたりにとって何物にも代え難いものだろう。

【  Detail  】

≪リビング≫

基本的に1階だけで生活が完結するように間取りを設計。開放的な空間づくりのために、吹き抜けを大きくし、自分たちのための寝室もあえて造らなかった。当初はピアノをリビング側に置くプランだったが、ピアノが日に当たるのを防ぐため、北側に変更した
ログ壁の一部を抜いてデザイン的なアクセントにした
左/小上がりには障子窓をつけ、縁なし畳を敷いた。木の壁はこうした和風の仕上げにもしっくりなじむ。夜はここに布団を敷いて寝ているそうだ 右/小上がりは有効に利用できず物置き場になってしまうケースも多いが、ご夫妻は上手に使っていて、この場所がとても気に入っているそうだ
ピアノが置いてあるスペースに2階へ続く階段があり、その奥には収納力たっぷりの造りつけの本棚が
ログ材は国産ヒノキを使ったもの。113×203mmの芯持ち材で、独特の白味が強い色合いが、室内をより明るくしてくれる。ヒノキならではの清涼感ある香りも魅力だ

≪ダイニング≫

料理が出しやすく片づけもしやすいカウンターキッチン。ダイニングの照明は定番のPH5、耳つきのウォルナットのテーブルとチェアはアトリエ木馬のもの。このチェアが座りやすく気に入っている。ベルベットのカーテンもこだわりのひとつだ
グラスハンガーは、ログメーカーの担当者が手づくりして取りつけてくれた

≪洋室、フリースペース≫

2階にある7畳ほどの洋室は、来客時に個室として利用。いつもは引き戸をあけてフリースペースとつなげ、大きな空間にしている
引き戸のアクセントになっているのがモミジの絵柄のステンドグラス。ログメーカーがデザインしたものを、ご近所のステンドグラス職人に作ってもらった
左/2階フリースペースからさらに数段階段を上がったところに、もうひとつ3畳ほどのスペースが。これは見晴らしのいい場所でロッキングチェアにでも座り読書を楽しめるようにと、ログメーカーが設計に加えてくれた 右/フリースペースの一画には、仕事ができるデスクが置いてある

≪サニタリー≫

広いトイレというのもおふたりのリクエスト。幅、奥行きともに1.8mある正方形の空間は、ゆったり読書ができてしまうほどの快適さだ。そのためたくさんの本が置かれているのだが、その本棚のデザインがかなりユニーク。これもログハウスの遊び心だ。収納棚はログ壁をうまく利用して設置している
南西側に位置する洗面所は、大きな窓があり明るく清潔感あるスペース。衣類などを大量に収納できるウォークインクロゼットが便利だ。奥のドアからはデッキに出ることができる

≪外観≫

2階部分の外壁には、耐候性が高いガルバリウム鋼板を使用。ログ壁の塗料も、耐候性を考え塗りつぶしタイプを選んでいる
重厚感ある濃い色の壁に、さわやかな白い玄関ドアが映える。玄関ポーチはかなり広く、スロープが設けてある。ログハウスの躯体から屋根を出し、その下をカーポートにしているが、その屋根を支える壁がユニークで、薪棚と兼用になっている

【DATA】 ●使用目的/別荘 ●家族構成/夫婦+長男、長女 ●工期/2021年7月~2022年4月 ●構造/丸太組み構法(スクエアノッチ)、地上2階 ●使用ログ材/国産ヒノキ プレーン(W11.3×H20.3cm) ●外壁の塗料/ ティックリラ(2回塗り) ●内壁の塗料/無塗装 ●基礎/布基礎 ●ストーブ/ヒタ ノルン ソープストーン+オーブン ●床面積/1F 80.95㎡(24.48坪)、2F 41.95(12.68坪)、延床面積 122.9㎡(37.17坪) ●設計・施工/夢木香(株)  https://yumekiko.com/ TEL 052-807-4890

取材・文/原 太一、写真/畔柳純子