300角の大径材で建てたモダン&シックな唯一無二のマシンカット

開放感あふれるリビングや趣味に没入できるアトリエ、心身を整える爽快なサウナまで、理想のログハウスに求めるものは、人それぞれ。譲れないこだわりを追求して、理想の暮らしを手に入れた人たちのログハウスを訪ねた。

長野県・加藤さん

設計・輸入・施工/(株)JIN

前代未聞の大径角ログでワクワクする空間をつくる

外観は、加藤さん曰く「戦艦みたいでかっこいい」。屋根はシルバーのガルバリウム鋼板で、大径角ログのトラスと、途中で勾配を変えた下屋がアクセントに

大径の角ログを使用したトラス構造。不揃いなログエンド。テラスに乱張りされたブラッククォーツ石。重厚でプレミアム感たっぷりのログハウスは、施主の加藤さんとJINの小池さんが意見を出し合って完成させた別荘兼簡易宿泊施設だ。 「JINの小池さんと家を建てるのは2軒目。作るなら唯一無二のログハウスにしたかった」と加藤さん。話し合いの結果、まとまったプランは「300角の国産材を使った、モダンでシックなログハウス」。ハンドカットログで建てる案もあったが、モダンなテイストに仕上げるためマシンカットログに。小池さんも、「大径材だから調達や乾燥も大変で、加工もスムーズにはいかなかった」と振り返る。「加工機にはギリギリ入るけど、ここまでの大径材を削れる刃がなくてドイツから取り寄せてもらったよ(笑)」

外観でひと際目を引くのが不揃いなログエンド。「ハンドカットの家でよく見られるデザインをマシンカットの材で再現。軒の出が深いから、より印象的になったよね」とJIN の小池さん

小池さんや製材所の尽力の末、無事に300角のスギ材が揃った。室内の天井は国産ヒノキを使用するなど、大部分は国産材でまかなった。「モダンでシックをコンセプトにする一方で、JINさんらしさでもあるラスティックなテイストも入れたかった」と加藤さん。その要望はラフ面を表に出した壁やチョウナで削った破風・鼻隠しなどに反映され、味のある空間が生まれた。

太い梁が走る吹き抜けのリビングダイニング。大空間に負けない存在感のソファは、イリアの「ニコライン」のもの。ペンダントライトはイギリス「トム・ディクソン」社のMELT」。高低差をつけて大小のシェードを吊るし、空間のアクセントにした

「小池さんがつくる空間って、いろいろな要素が融合していてすごくワクワクするんですよね。家具や照明は自分で選びましたが、この空間にマッチするような異素材の組み合わせを意識しました」(加藤さん) ダイナミックなようで繊細、モダンなのに親しみやすくリラックス感もある。唯一無二のこの家で過ごす休日は素晴らしいものになるだろう。

【  Detail  】

≪外観≫

左/長野県白馬村という土地柄、雪除けのために軒の出を深く取った 右/重厚感のある外観でアクセントになっているのが、深い軒を支えるログ積みの柱。根本のスクリュージャッキは、板で覆って見た目を揃えてある
破風板はレッドシーダーで、わざわざ表面をチョウナで削ってある。凹凸の表情に手作業の味わいがしっかり感じられる仕上げだ
軒下はテラスとして活用できるようガーデンファニチャーを設置。床面に乱張りしたブラッククォーツ石がより高級感を高めている
日が沈み、ライトアップされたかのように室内外のあかりで浮かび上がる加藤邸。軒の出やトラス構造がまた違った印象に見える

≪リビング≫

天井は国産ヒノキ材を採用。空間に統一感を出すため、天井と壁面はオリーブブラウン色でペイント。薪ストーブはメトスの「コンツーラ Ci51Fika」。三面ガラスなので、どこからでも火が楽しめる
シーリングファンは「Fanimation」の「スピットファイヤー」。「あえて木製にして、天井になじませました」と加藤さん
窓は「日本の窓」の木製窓「MADOBA」を採用。内開きと内倒し、ふたつの開き方が可能で、換気がしやすい
ラスティックな雰囲気を出すため、表面をアックスで削ったレッドシーダーを一部の壁に採用。夜になると凹凸に照明の光が反射し、また違った表情を見せる
階段にはあえて表面を少し粗く仕上げた材を使用。すべりどめにもなる

≪ダイニングキッチン≫

「親を招いて、3世代揃って過ごしたい」というのも家具選びの基準。10人で食事することも可能なダイニングテーブルは「カリガリス」のもの
キッチンはLIXILの「リシェルSI」。窓サッシの色に合わせてワークトップや扉はグレーをセレクト

≪主寝室≫

左・右/キッチンの奥にある主寝室は、トイレと洗面所つき。壁の一部に採用したのは、カナダ・バンクーバーの製材所から輸入した珍しい材。「先住民族のハイダ族がサイディングに使う材を再現したものなんです」と加藤さん。耳つき板ならではの波打つラインが特徴

≪サニタリー≫

左/浴室はセラミックタイルを使用し、黒を基調とした高級感ある空間 中央/洗面脱衣室は同時に身支度できるよう、シンクをふたつ並べた。壁面はラフ面を表にした板張り 右/トイレの壁もラフ面を表に。空間にゆとりがあり、小さな子どもがいる親にも使い勝手がいい

≪2階ホール≫

上・下/2階ホールは、ソファやチェアを置いてフリースペースに。「僕はここに座って吹き抜けを眺めるのが好きですね」と加藤さん。ログハウスの魅力を知ったのはカナダ留学時代。「ログハウスは人が集まって、くつろいで過ごせる場所でした。木と石、火がある空間って、本当にリラックスできるんですよ。この家も、僕たち家族はもちろん、宿泊する方にとって大切な空間になってほしい」と話す。ちなみに、加藤さんが腰掛けているソファ近くの柱の1 本は、何と床柱に使用される高級材のケヤキ。製材所からプレゼントされたものだ

≪2階&屋根裏 寝室≫

2階の寝室。ソファはベッドにもなるので、この部屋に3人まで泊まれる
屋根裏にもツインルームが1部屋ある

【DATA】 ●使用目的/別荘兼簡易宿泊施設 ●家族構成/夫婦+長女、次女 ●工期/2022 年10 月~ 2023年7月 ●構造/丸太組み構法(スクエアノッチ)、地上2階 ●使用ログ材/スギ(W30.3 × H28.5cm) ●外壁の塗料/和信化学工業 ガードラックPro GP1 ブラック(2回塗り) ●内壁の塗料/コシイプレザービング ステンプルーフ オリーブブラウン(1回塗り) ●基礎/ベタ基礎 ●ストーブ/メトス コンツーラCi51Fika ●床面積/ 1F 159.50㎡(48.25 坪)、2F 35.00㎡(10.59 坪)、延床面積 194.50㎡(58.84坪) ●設計・輸入・施工/ (株)JIN https://jin-inc.co.jp/ TEL 0267-31-6869

取材・文/藤屋翔子、写真/関根おさむ