【ハンドカット】原木の魅力たっぷり。大胆&ワイルドなログで暮らし方も変化

ログハウスにはさまざまなタイプがあり、立地条件やオーナーの要望もそれぞれ異なる。それをいかにカタチにするかがログメーカーの腕の見せどころだ。各社が知恵を凝らした、快適さとカッコ良さのための工夫を紹介しよう。

群馬県・Hさん

設計・輸入・施工/(株)JIN

リビングから続くデッキは、BBQや憩いのひと時に欠かせない場所。大胆に突き出たログエンドが屋根を支え、かつ壁の役目も果たして周囲の視線を遮る

ウエスタンレッドシーダーの巨木を組み上げたH邸。末口の直径が50cm を越えるような立派な丸太が多数使われている。樹皮が残り、節の跡も生々しいログは、素材そのままの味わいを感じられるのが最大の魅力だ。無塗装ゆえに自然にもやさしく、ログの色が変わっていく楽しさもある。

デッキを覆うように片側の屋根を折り、軒を大きく張り出させてある。突き出た太いログは屋根を支えるアウトリガーの役目も果たしている

建築を手がけたJINの小池さんは「これぞラスティック(飾り気がない、粗いの意)。もっと粗っぽくてもいい雰囲気が出る」と言う。そんな小池さんを信頼してまかせたというHさんは、もともとアウトドアが趣味。自然になじむ住まいを想像していたものの、建築時に敷地に山のような丸太が積み上がり、最初は驚いた。「こんな風にそのまま使うのか! と想像以上でしたが、暮らし始めてみると、これだからいいんだと感じます」と、今やすっかり虜だ。

ひとつながりになったLDK は、家族がどこで何をしているのかすぐ分かる安心感がある。開口部もログエンドを不揃いにしてあるのがユニークだ

「合間を見つけての薪割り、ストーブの最良の燃やし方を追求したり、デッキでのBBQ を楽しんだり、毎日やることがたくさんあって追いつきません」と笑うが、それが実に楽しそう。今は子どもが小さく、家族みんなが家で過ごすことが多いが、このログハウスを建てたおかげで、家での時間が充実したことを何よりも喜んでいる。

【  Detail  】

≪ログ材≫

あえてヒビやザラつきを残した木肌が味わい深い。無塗装のログは時を経て美しいシルバーへ変わっていく。ログが“育って”いくこともログライフの楽しみだ

≪LDK≫

中央には家全体を貫く1本の大きな梁が通る。ウッドデッキに続くリビングは北東向きだが、目の前には小川が流れて眺めが良く、直射日光が入らないのでむ快適に過ごせる
ご主人こだわりのストーブは、「クラシックデザインに憧れて」とドブレに。大きな薪が入り、炎がよく見えるのもポイント
ラスティックなログに合うよう、ステンレスキッチンを採用。ログ壁をカットしたカウンターごしに、LD にいる家族とコミュニケーションを取りやすい点も気に入っている
奥さまとは休日がずれることがあり、ご主人が育児と家事を担当することも。スパイスカレー作りがマイブーム
ステンレスのレンジフードは、木材でカバーして雰囲気良くまとめた
道路に面したLDKの壁には、プライバシーを重視して横長の高窓を設置。ログ1本分程度の高さがうまく空間になじんでいる

≪階段≫

階段から2階ホールを見上げたときの景色も迫力満点。ホールにあるオブジェ的に設置した柱も存在感たっぷり。大きなFIX 窓から光を取り込めるので、室内は明るい
角材の角を取って古材風のラフな仕上げを施し、2枚を少しずらしながら張った階段。少しザラリとした表面の感触も、足裏に心地いい
手すり子には鉄骨を使って力強さを演出し、ログの迫力に負けない力 強さとラフさが感じられる階段に仕上げた

≪2F≫

寝室にある柱は大人でも抱えきれないほどの太さ。この先は追加工事でステップをつけて、天井裏収納への上り口にする予定
オブジェのように立つ、2階ホールの柱。構造材ではなく、アクセントとして据えたもの。樹皮が残り、つい見入ってしまう存在感がある
ふたつの窓で明るい子ども部屋。2階の一部の床は赤みのあるベイマツを使用。同じ木材でも種類が異なると印象もだいぶ変わる

≪サニタリー≫

左/浴槽はヒバ製。カビを防ぐために下にすき間を設けて高くしている。床は砕いたモザイクタイル 右/コンパクトなトイレは、巨木でできたログ壁の力強さを間近に感じられるスペース。下に積んだログが太いので、ちょうど手をかけられる部分にほど良いせり出しができた

≪玄関、外まわり≫

左/玄関を入ると右がLDK、左にはシューズや洋服、バッグなどを置けるオープンな収納があり、水まわりに抜ける動線も便利だ 右/玄関はログから少し飛び出た構造。来客はまず突き出たログエンドに目を奪われる
明るいログハウスにしたい、というHさんの要望を受けて、北東と南西の妻壁に大きなFIX窓を設けた。巨木の柱が見えるのもおもしろい
きれいに端を揃えるのではなく、あえてランダムにして躯体を組み上げた。ビルダーの自由な感覚で組み上げることで、ほかにはない個性とリズムが生まれている

【DATA】 ●使用目的/自宅 ●家族構成/夫婦+長女 ●工期/ 2021 年2 月~ 2021 年7 月 ●構造/丸太組み構法(バタフライサドルノッチ)、地上2 階 ●使用ログ材/ウエスタンレッドシーダー(φ 30cm) ●外壁の塗料/無塗装 ●内壁の塗料/無塗装 ●基礎/ベタ基礎 ●ストーブ/メトス ドブレ760WD ●床面積/1F 72.93㎡(22.02 坪)、2F 69.17㎡(20.88 坪)、延床面積 142.10㎡(42.90 坪) ● 総工費/3637 万円+税(仮設工事費87 万円、基礎工事費214 万円、ログ材料費1960 万円、組み上げ・木工事費480 万円、屋根・板金工事費125 万円、左官・塗装工事費36万円、設備工事費461 万円、その他274 万円) ●設計・輸入・施工/(株)JIN https://jin-inc.co.jp/ TEL 0267-31-6869

取材・文/魁生佳余子、写真/関根おさむ