緑いっぱいの森に建つ無垢の木の家で心豊かに過ごす

「自然が大好きで木の家を建てて暮らしたい」。そんな思いを実現したオーナーの暮らしぶりをのぞいてみた。思い思いに楽しむ自分流のナチュラルな暮らしと、そんなライフスタイルに似合う素敵な住まいを紹介しよう。

茨城県・Tさん

設計・施工/(株)芳賀沼製作

日々変わる風景を楽しみながら暮らす

シンプルな木の箱といった佇まいの外観。角材を縦に並べてつないだパネルを、土台、柱、桁、梁の外側に張りつける「パネルログ構法」の家だ

昔から丸太小屋にあこがれていたご主人が森の中に移住するにあたって新居に選んだのは、ログ材を横に積むのではなく、無垢の角材を縦につなぎ合わせてつくる「パネルログ構法」の家。 「ログハウスは好きだけど、非日常の家という気もしていて……。そんなとき雑誌で、縦ログの家を見て『これだ!』と、すぐに見学に行きました」とご主人。それと前後して、タイミング良く「ここだ!」という土地にも出会い、1年ほど前に森の中での暮らしをスタートした。 「庭は一面篠竹の藪で、まずそれを刈ることから始めました」。草を刈り、地面に光が当たるようになったことで、サンショウやマンリョウなどの植物が芽吹き、植生豊かな森の庭ができ上がった。

ふたつの大きな窓からの景色が楽しいリビング。緑の庭しか視界に入らない、とても豊かな空間だ
奥さまの作ったサンキャッチャー。多面体にカットされたクリスタルに当たる光を楽しむインテリア小物で、そこへビーズとワイヤーで木もれ日や新緑、落ち葉、日々変わる光の様子などの自然を表現したモチーフをつけてある

緑の庭をのぞむ家は、壁も床も天井にも、105㎜角のスギ材を用いた、丸ごと無垢の木の家。パネルログを考案した芳賀沼製作の規格型住宅「パネルログキューブ」をカスタマイズしたモデルだ。 「元の間取りに収納を追加し、庭を望む窓を大きくしてもらいました。1、2階にそれぞれひと部屋というコンパクトな家ですが、夫婦ふたりで暮らすにはちょうどいい。木の床や壁は触れるとほんのりあたたかく不思議なくらい落ち着き、癒されます」とご主人。 「家の中から見えるのは木々の緑だけ。景色も空気も同じ日がないんです。そうした変化に敏感になりました」というのは奥さま。そんな日々変わる風景をテーマに、創作活動も始めた。「ものを作るなんてこれまでしたことがなかったのに、ここにいるとなぜか創作意欲がわいてきて、庭の枝を使って小物を作ったり、今は石やビーズを使ってサンキャッチャーを作っています」。 ふたりの言葉からは、森の中の木の家での暮らしの心地良さ、楽しさがあふれ出ている。

【  Detail  】

≪外まわり≫

バルコニーはないが2階の窓も掃き出し窓にして開放感のある造りに
家の完成前は、庭でキャンプをしながら草刈りをしたことも。ご主人、奥さまと、娘さんのKさん
玄関には小屋根をつけた。母屋のデザインの良さを損なわないシンプルなスタイル。木の壁は、105㎜厚の角材からなるパネルログに通気層を設けたうえでスギ板を張っている

≪LDK≫

1階はLDK+サニタリールーム。左に見える白い壁の中にサニタリーを集約した。右の掃き出し窓の外にもウッドデッキがある
キッチン横に増築したパントリー。「何でもしまっておけるので、とっても便利。作ってもらって正解でした」と奥さま
家の壁と同じパネルログの材料で作ったダイニングテーブル
玄関から直接リビングにつながる間取りだが、階段があるためまるで玄関ホールのような空間ができた
リビングの一角に配した薪ストーブは、ヨツールのF162。薪は建築時に伐採した庭の木や家の残り材などを使っている

≪2階≫

2階もシンプルなワンルーム。壁も床も天井も、すべてスギ。「個室はありませんが、ひとりになりたいときがあれば上下階に分かれて過ごせるのでOK」と奥さま
2階の床を横から見たところ。パネルログが床と天井を兼ねる造りになっているのがわかる
壁のパネルログ。土台、柱、桁、梁を組み、7本の角材を組んだパネル部材を柱間に落とし込んだものを1 セットとして壁を作っている
学生時代から、今もオーケストラに参加するご主人。担当はチェロ。木に囲まれた空間に、まろやかな音が広がった
2階の一角にある奥さまの作業スペース
奥さまのサンキャッチャーづくりを拝見。石やビーズをワイヤーでつないで、モチーフをつくる。「ここに暮らしてから感じるようになった自然の変化や光の美しさを表現しています」

≪サニタリー≫

サニタリールームは1階の角に集約した。洗面・洗濯室と浴室はキッチン横から、トイレは玄関側から出入りする配置

【DATA】 ●使用目的/自宅 ●家族構成/夫婦 ●主要構造材/スギ(パネルログ t= 105) ●ストーブ/ヨツール F162 ●敷地面積/ 1271.53㎡(384.64坪) ●床面積/ 1F 32.76㎡(9.90坪)、2F 29.81㎡(9.02坪)、延床面積 62.57㎡(18.93坪)

取材・文/たむらけいこ、写真/関根おさむ