香りのいいヒノキの平屋ログ。断熱性が高く、間取りもユニーク

日本の森林の4割を占める人工林で「使って植える」サイクルがもっと活性化すれば、環境保全に役立つことは間違いない。一般住宅の3倍も木を使うとされるログハウスに、国産材を活用する意義は大きい。そんな国産材を生かしたログハウを見てみよう。

愛知県・Iさん

設計・施工/夢木香(株)

こだわりのインテリアで上質な暮らしを実現

森の中に佇んでいるかのようなI邸。黒と一部をグレーで塗装した横長で安定感のあるシックな外観だ。夢木香のアドバイスを受けながら、壁から軒裏まで家族総出でDIY 塗装した

静かな郊外に佇む、「和」をイメージして黒く塗装した平屋建てが、Iさんが住むログハウスだ。海外育ちで古民家へのあこがれがある奥さまと、ハウスメーカーを推すご主人。互いが歩み寄るなかで見出した接点が、断熱性が高く暮らしやすい夢木香のログハウスだった。 奥さまが重視したのは、生家で使っていたアンティーク建具や陶器の洗面台などを生かすこと。室内の各所に設置した思い入れのあるアイテムが新居に個性を添えている。

屋根の勾配を生かした高い天井やトップライトで開放感たっぷり。薪ストーブはヒタのノルン。アヒージョやパンなどの調理に活躍する

平屋にしたのは、奥さまが上下移動のない生活を希望したことと、同社の完成見学会で体感した平屋の高い天井がもたらす開放感から。間取りは、ドイツ製のキッチンが主役のLDKと、家族構成を考慮して配置した4つの個室で構成されている。「身支度やサニタリーへの動線がとても便利。平屋だからという以上の暮らしやすさを感じます」と奥さま。

洗面台とトイレは、別荘に保管していた陶製のアンティークな海外製品。「これらの取りつけを快諾してくれた夢木香さんに感謝です」と奥さま

ログシェルには、国産ヒノキの無垢材を使用。国産材で建てる家は、日本の風土に合うのが利点だ。ヒノキの壁に囲まれた空間は、暮らしを重ねるごとにその良さを感じるという。「ログに割れが入るときの、パキッという音が好き。生きた木で造られていると感じます」。 また、実感として「何だか調子が良くて、以前は気になっていた不調を忘れるほどです。すがすがしいヒノキの香りにも癒されますね」。断熱性の高さや夢木香オリジナル24時間換気システム「エアーヒル」の使用によって、室内温度は一年を通して安定。体へのやさしさを感じる住まいで、ご主人はDIYや薪づくり、奥さまは料理や庭仕事を楽しみ、豊かな暮らしを満喫している。

【  Detail  】

≪ログ材≫ ヒノキ(W11.3 × H20.3cm)

昔から神社仏閣に使われ、年月が経つほど強くなる耐久性に優れたヒノキ。湿気にも強く機能的に優れた木材で、白さを帯びた木肌は空間に品を与える

≪LDK≫

手持ちの食器棚につなげる形で、棚を造作。高さや幅、棚の造りなどを綿密に打ち合わせをし、小型家電がおさまるようにしてある
LDKと洋室の間は3枚の引き戸で間仕切りし、使い勝手に合わせて開閉可能だ。ふだんは開放してリビングとつなげ、広々と使っている

≪寝室≫

寝室の引き戸をあけるとすぐ隣が洗面室や浴室、トイレ。反対側はウォークスルーのクローゼットなので、身支度の動線が驚くほど短い

≪洋室≫

LDKと隣り合わせの洋室は、映画鑑賞やヨガなど、リビングから離れて落ち着きたいときに最適な空間。ツガ材の造作引き戸は、3枚すべて左奥に引き込める

≪ロフト≫

玄関から棚階段を上ると広々としたロフトに。今はもっぱら収納空間だが、部屋としても使える広さ。ここから個室へ下りられる仕掛けも
随所にドレーキップ窓を採用。内開きと内倒しの2通りの開閉ができ、気密性に優れた住まいの換気に役立っている

≪サニタリー≫

水まわりの床は、意匠性と機能性を考えて大理石張りに。LDK のレッドパインのフローリングとは、同じ自然素材ということもあり相性がいい

≪玄関≫

入ったとたんヒノキの香りがする玄関。奥さまの家族の思い出を想像して描いてもらった絵画が、やさしい色合いで華を添えている
左/玄関横の土間収納。外着や靴を効率良くおさめられるように、夢木香と相談をしながら設計し造り上げた 右/土間収納からロフトへ上がれるように、棚が階段になっている。不安なく上り下りできるように計算して、棚のサイズを設定した

≪外まわり≫

I邸はログの住居に倉庫をつなげたプラン。倉庫前のあいたスペースは、ご主人のDIYなどの作業場に。屋根が架かった使いやすい半屋内空間だ
慣れた手つきでキンドリングクラッカーを使って薪割りをするご主人。庭には、庭師 に教えてもらいながら一緒に積み上げた薪棚がある
敷地の境界は石積みで。友人の助けを借りて、1個1個積み上げていった。大きさの違う3つの石は、家族ひとりひとりをあらわしている
玄関ポーチから続くウッドデッキは、ダイニングスペースからも出入りができる。外壁と同じ黒で塗装したので一体感がある

【DATA】 ●使用目的/自宅 ●家族構成/ご主人、奥さま、長女 ●使用ログ材/ヒノキ(W11.3 ×H20.3cm) ●敷地面積/ 320.43㎡(96.93坪) ●床面積/ 1F 109.64㎡(33.17坪)、ロフト 15.51㎡(4.69坪)、延床面積 109.64㎡(33.17坪) ●総工費/3790万円+税

取材・文/椋木敬子、写真/永田ゆか