アウトドア好きの理想を詰め込んだ終の住処のログハウス

「こんなログハウスを建てたい」と夢をふくらませるのは楽しいものだ。ゼロから考えるのもいいが、参考例があれば発想がふくらんでベストな形が生まれやすくなる。自分なりにアレンジするのももちろんアリだ。日々の暮らしを幸せにしてくれる、「まねしたくなる秀逸アイデア」を紹介しよう。

群馬県・松尾さん

設計・輸入・施工/高原都市開発(株)

大きな片流れの屋根が印象的なログハウス。ガレージの上は3.8 m張り出しているので雨でも傘をささずに屋内に入れる

山登り、山スキー、渓流釣りなどアクティブな松尾さんご夫妻にとって、群馬県草津町は慣れ親しんだ土地。山のすぐそばに住みたいというのが、土地探しのきっかけだった。しかし最初は「中古の家でいいか」という程度。ログハウスづくりへと背中を押したのは、ご夫妻のアウトドア経験だ。

レッドパインがやわらかな雰囲気を醸し出す、開放的な造りのリビングダイニング。将来の生活を考慮し、車椅子でも移動しやすい設計

「以前、岩手県松尾村(現八幡平市)の山小屋に泊まりながらスキーで山越えをしたことがありました。そのときの薪ストーブ、小屋の雰囲気が懐かしく、山小屋風の家にしたいと思い始めました」とご主人。高原都市開発が行っていた宿泊プランも数回体験し、ログハウスの気持ち良さも実感した。 いずれは永住することを念頭に置いたので、ログハウスにはご夫妻のこだわりが詰まっている。ログ材、窓、ドア、塗料などはすべてフィンランドから輸入したもので、なかでもご主人のイチ押しがサウナだ。浴室で水風呂に入ることも、ベランダに出て涼むこともできるサウナは、今や仲間が集う拠点となっている。

左/「家を建てるならサウナをつけたい」と本場フィンランドの「HARIVA」を輸入。本格的自宅サウナはご主人の自慢のひとつ 右/サウナストーンと電気式サウナストーブ。この石に水をかけて室内を蒸気で満たす

片流れの屋根にしたのは、上高地で泊まった山小屋の形状が心に残っていたからだ。ベランダにつながる窓は移動しやすいように大きく取り、吹き抜けの三角窓はご主人が自ら採光を考えて位置を決めた。2階の窓は、どこからでも山並みを眺望できることを優先した。 生活空間としての工夫も随所にある。いずれ東京の住まいを引き払うため、荷物を運び入れる大きめの収納を設置。歳を重ねてからの移動を考えて、廊下や室内空間を広く取っている。

左/外で食事をしたり友人たちとくつろいだりできる広めのウッドデッキ。「サウナに入ったあと、ウッドデッキで涼むのも最高」とご主人 右/外壁の塗料はフィンランド製のティックリラ。赤い扉は奥さまのこだわり。好みの色を探して何十色も試行錯誤した末、この色にたどり着いた

完成して1年経ち、ログハウスの蓄熱性や遮音性の高さなど住み心地の良さを日々実感しているというご夫妻。さらに「四季を通じて景色がすばらしく、山歩きも楽しめるし温泉もある。これからが楽しみになりました」とご主人。ログハウスがご夫妻の人生をさらに豊かに彩っている。

【  Detail  】

≪リビング≫

上の三角窓はご主人が季節ごとの太陽光の入り方を計算して高さを決めた。ウッドデッキにつながるサッシと相まって明るく開放的
「キャンプのようにみんなが囲める雰囲気にしたかった」ので、薪ストーブはあえて小さいものを選び、リビングの中心に
隅を薪置き場にした広い炉台。床との段差をなくすことで薪をくべるなどの作業がしやすく、またつまずき防止にもつながっている
フィンランド・スカーラ社製のトリプルガラスのサッシは断熱性抜群。その分厚みがあるので、10cm 幅の板を設置してカーテンレールをつけた

≪キッチン≫

ログと同じパイン材でキッチンの棚を造作。収納力が十分なうえ、室内との一体感も生まれてすっきりとした印象に仕上がった
通路が広く、動線がスムーズなキッチン。これも年を重ねてからの動きやすさを考えて設計。背面の作業台も使いやすい

≪寝室≫

上・下/ひとつのレバーで内開きと内倒しができるスカーラ社製の窓。毎朝山並みを楽しめるように、寝室の窓は眺望を第一に設置した

≪サニタリー≫

ユニットバスの壁の一部を抜いてサウナを接続。脱衣所を通らずに浴槽の冷水に浸かることができる
脱衣所には、あたためた石に水をかけるひしゃくやタオルなど、サウナグッズが常備されている
洗面化粧台は下部に扉のないシンプルなタイプを造作。出し入れがしやすく湿気もこもらない。左の棚も奥行きを合わせて造作した
寝室の向かい側のトイレ。すぐに支度ができるように洗面台を取りつけ、車椅子でも出入りできるように広い室内にした

【DATA】 ●使用目的/二地域居住(別荘) ●家族構成/夫婦 ●使用ログ材/フィンランドレッドパイン(W13.4×H18.0cm) ●ストーブ/モルソー「7110CB」 ● 敷地面積/1468.56㎡(444.23坪) ●床面積/ 1F 81.87㎡(24.77坪)、2F 44.17㎡(13.36坪)、延床面積126.04㎡(38.13坪) ●総工費/3000万円+税

取材・文/上田里恵、写真/関根おさむ