この場所にいるだけで心と体が健康になる木と石の住まい

「こんなログハウスを建てたい」と夢をふくらませるのは楽しいものだ。ゼロから考えるのもいいが、参考例があれば発想がふくらんでベストな形が生まれやすくなる。自分なりにアレンジするのももちろんアリだ。日々の暮らしを幸せにしてくれる、「まねしたくなる秀逸アイデア」を紹介しよう。

山梨県・Kさん

設計・施工/夢木香(株)

広々としたリビングダイニング。リビングは南側に1.2m張り出させて大きな窓をつけることで、開放感を高めた

八ヶ岳の麓の静かな森の中に建つ、黒く落ち着いた雰囲気のログハウス。明るい日の光が注ぐ玄関を抜けリビングに入ると、大音量のジャズの音色が心地良く体を包み込んだ。 「とてもいい音でしょう。このログハウスの音響は最高です」と迎えてくれたのは、この家のオーナーであるKさん。現在、東京の自宅と完成して間もないこのログハウスとでデュアルライフを行っている。

左/音源はアナログのレコード。人間の耳では聞こえない超高周波領域までを再生する、杏林音響医学研究室のオーディオシステム「フロイデ」を設置している 右/ソファに座り音楽を聴くK さんご夫妻。現在はここと東京の自宅とを行き来しながら暮らしている

「コンセプトは『祈りと音楽を捧げる家』。訪れる人みんなが元気になる健康住宅として建てました」とKさんが話すこの家は、延床面積約145㎡のマシンカットログハウス。白くペイントしたログ材は、国産ヒノキを使用した厚さ140mmのラミネート材で、加工も国内で行ったもの。ヒノキでこれだけの厚みがあるログ材は、ほかに例がないだろう。

床材は薄く緑がかった色合いが上品な天然石。木よりかたい床が音を引き締めるため、まるで目の前で演奏しているようなリアルな音響が得られる

床もユニークで、一般的にはパインやスギなどの無垢の床材を使うことが多いログハウスの床だが、K邸では天然石のタイルを使用。音響がいいのもこのおかげで、かたい床の石が適度に音を引き締めてくれるのだという。 また、温水式の床暖房を使用しており、じんわりと熱を帯びた床のあたたかさが実に心地いい。聞けば、基礎の中が塩、セラミック、炭を何層にも重ねた構造になっており、遠赤外線効果で体を芯からあたためる健康的なぬくもりが得られるのだという。しかも、1階の床すべてに温水パイプを張りめぐらせているので、寝室やトイレだけが寒いというようなヒートショックもない。「常に岩盤浴をしているようなものです。この家にいるだけで元気になりますよ」とKさんは笑うが、まさにその言葉通りの快適さである。

明るく見晴らしがいいダイニング。シックなテーブルやチェア、照明はデンマークの家具ブランド、ボーコンセプトで揃えている

いずれは、自然豊かなこの地で農業と自分の仕事を両立させて、半農半Xの生活をしたいと話すKさん。すこやかなその暮らしの舞台として、これほどふさわしい住まいはないだろう。

【  Detail  】

≪リビング≫

端正な印象のリビング。健康効果を見込んで床下には1 mの深さまで土、塩、セラミック、炭を何層にも重ねた。また、中心部に長さ180cm のヒノキの柱を埋めている
薪ストーブは、室内で焚き火をするような感覚が楽しめるチェコのホクスターのもの。暖炉部分を囲む壁は、床と色を合わせた
ログ壁は清潔感があるホワイト、調度品やアクセントになる部分は引き締め効果がある黒と、シンプルで美しい配色を心がけた
リビングの空間と、ダイニングへの通り道となる空間をさりげなく仕切る3本の黒い柱。これがリビングの格調をぐっと高めている

≪キッチン≫

キッチンはアイランド型。大きなカウンターはTOTO のザ・クラッソで、すりガラス調の透明感あるカウンタートップが美しい
ログ壁と色調を合わせた収納は、ログメーカーの造作。このほか広いパントリーもあり、キッチンまわりの収納は余裕たっぷり

≪サニタリー≫

シンプルなデザインで洗練された印象のトイレと洗面所。ここも温水式の床暖房になっているので、床の冷たさや寒さを感じることがない
ダイニングキッチン、サニタリースペース、リビングがぐるりとまわれる回遊動線で、各場所の行き来がしやすくなっている
通常のサウナより低音で高湿度な、コロナのミストサウナを設置。マイナスイオンたっぷりで、体の芯から心地良くあたたまるそうだ

≪2階≫

2階のフリースペースも広く、天井が高くて開放感いっぱい。2階にある5つの部屋を、今後どのように有効利用するか思案中だ
2階の手すりは、黒いアイアン製。アイアンならではの重厚感とカラーリングが、モダンな空間をつくっている
八百万の神様を祀った瞑想室。天窓があって明るく、清らかな気持ちになれそうだ。折れ戸を閉め客間としても使うこともできる

≪玄関≫

玄関も広々。大きなシューズクロゼット、ウォーク・イン・クロゼットなど、暮らしの道具類をしまっておける収納がたくさん
玄関とリビングを区切るドアには、やさしい光が入るステンドグラスを入れた。ステンドグラス作家、八田大輔氏の作品

≪外観≫

森をバックに佇むK邸。外構はまだこれからだが、川を流し、ロックガーデンやサウナ小屋を造るなど、多くの構想がある
霊峰として知られる権現岳の麓にこの家を建てるにあたり、外観は神社、神殿を意識。ログ壁は黒くし、柱や破風を朱色にしている

【DATA】 ●使用目的/ 別荘 ●家族構成/ 夫婦 ●使用ログ材/ヒノキ(W14×H20.3cm) ●ストーブ/ ホクスター「HAKA60/50sh」 ● 敷地面積/982.20㎡(297.11 坪) ●床面積/ 1F 114.6㎡(34.67 坪)、2F 85.94㎡(26.00 坪)、延床面積 200.54㎡(60.87 坪)

取材・文/原 太一、写真/関根おさむ