大好きな動物たちとのびのび暮らす手作りワイルドライフ

山間ののどかな風景に映える大きな三角屋根のログハウス。ヤギとネコたちがのんびりと暮らし、オーナー手作りの木工作品が生活を彩る。自然の中でこそ実現できるスローライフをご紹介。

山梨県 井出さん

動物たちと自然があってこそ実現したログハウス生活

自宅前の草地でヤギの放牧をするのが日課。木立に映えるログハウスと緑の草、ヤギがいる風景はまるでアルプスの高原

木立を背にして佇む井出さんのログハウスは、まるで海外の風景を切り取ったかのよう。南に富士山をのぞむ景色が広がる。家の裏手にはヤギ2頭がのんびりと遊び、家の中では5匹のネコが思い思いの場所でくつろぐ。「以前住んでいた場所は日照時間4時間程度と日当たりが悪く、広々とした明るい家に住みたかったんです。何より自然の中でヤギかヒツジを飼うのが夢で、それならログハウスがぴったりかな、と」。これが、井出さんがこの地に居を構えた理由だ。知り合いに声を掛けて土地探しを開始した。すると、意外にも広い土地の扱いに困っている地主がいて、土地を提供してもらえることに。建築中は足しげく通い、完成前には約3カ月かけてご夫妻で外壁のセルフ塗装も行った。

奥さま自作のヤギの遊具
いちばんのお気に入りのドラム缶ハウス

奥さまは「動物と暮らすために移り住んだようなもの」という大の動物好き。そして家の中の棚やテーブルなどを自作するほど木工が得意でもある。ヤギの遊具や小屋、薪を保管しておく小屋も作る。木工技術は独学というが、2020年にニュースになった「崖の上のヤギ」を保護した、千葉の「佐倉草ぶえの丘」にヤギ小屋を寄付したこともある。木工の醍醐味は、「思い通りの作品に仕上がり、それが頼まれたものであれば依頼主喜んでもらえること」だという。また、必要なものをできるだけ自分で作るのは、建築中に出た端材をむだにせず使い切ろうと考えたからだ。

仕切りをなくした開放的なリビング。パイン材のやわらかな足触りが心地いい。棚やテーブルはほとんどが奥さまの手作り
奥さまが取りつけたキャットステップ。5匹のネコたちがピョンピョンと渡り回遊するのに欠かせない

「ここに住み始めて大きく変わったのは時間の流れ。自然に囲まれた静かな環境にいると、あくせくと動きまわらなくなりました」と語る奥さまの一日は、ヤギやネコたちの世話から始まる。木工製作を頼まれたり、アイデアがわいたりすると昼間は作業に没頭し、午後3時頃からヤギたちを放牧。1時間ほど過ごしてから帰宅し、夕飯の支度を始める。時には羊毛コースターや松ぼっくりのリースといった小物を作ることもある。「動物たちも自分たちも幸せに暮らすこと」を実現するために、この土地とログハウスを選んだ井出さんご夫妻。「のんびりと草を食むヤギを見たり、景色を望む明るいリビングで駆けまわるネコたちを眺めたりするのが至福の時間」というログライフは、豊かな自然と動物たちとともにある。

【  Detail  】

≪リビング≫

木の皮をむいて縄を巻いたお手製のポール。ここから2階に上がるのがネコたちのお気に入り。枝もステップとして利用
猫砂があちこちに飛び散らないように作った猫トイレ専用室。ネコたちは小窓から出入りできる。掃除は廊下側の出入口から
木材とのコントラストが楽しい薪ストーブのコーナー

≪キッチン≫

キッチンはデッキに隣接しているのでバーベキューに重宝する。ネコたちはキャットステップやウォークを伝って家中を飛びまわる

≪ウッドデッキ≫

羊毛フェルトを作りながら談笑。このテーブルも奥さまの自作。キャスターがついているので移動も簡単
デッキのテーブルにはバーベキューグリルをセット。覆っている木のふたを取れば、すぐにバーベキューができる

≪屋外での暮らしぶり≫

自宅裏にあるヤギたちの広場。在宅時はご主人もヤギの世話をする。広場を囲むのはストーブに使う薪棚で、奥さまの自作
ヤギの茶茶丸(左)とサンタは2歳の双子の兄弟。放牧中は畑作業をしている近所の人に草をもらったり、好物のクワの葉を味わったりする
たくさん使う薪は薪小屋を作って保管。こちらの「薪ホーム」と名づけた薪小屋は、風抜きの小窓を設けて倒壊を防ぐ設計
薪割り機で大量の薪を割る。縦・横両用の薪割機は、「縦型にすれば重い薪を持ち上げる必要がないので、とても楽」
建築中に出た端材置き場。これで室内の棚やヤギの遊具などを自作した。「山盛りだったのが、2年ほどでこの量に減りました」
ヤギたちの寝室。自宅の赤とオレンジの色合いが美しい。ログハウスの外壁に使った木材の残りで製作

取材・文/上田里恵、写真/関根おさむ