毎日が非日常の美しさ。好きなものだけに囲まれて暮らす、豊かな生活

ログハウスは建てて終わりではなく、生活の楽しみを受けとめ、ふくらませる大きな器のようなもの。家族と一緒に歴史を刻み、より魅力的になってく。オーナーによってそれぞれ異なる好みを反映して生まれた魅力的な住まいと、その暮らしぶりを紹介しよう。

長野県・三宅さん

設計・施工/TALO松本 ㈱フジミヤ 輸入/㈱TALOインターナショナル

大好きな安曇野にログハウスを建て移住

明るいリビング。延床面積がおよそ70㎡の平屋と比較的コンパクトなサイズだが、大開口と高い天井のおかげで十分な広さが感じられる

三宅さんご夫妻は、長野県安曇野市の静かな森の中にログハウスを建て、愛知から移住してきた。キャンピングカーで全国を飛びまわって登山をするという旅を年間100泊近くも楽しみ、アウトドアライターとしても活躍するご主人。ともに登山と旅を楽しみ、ヨガインストラクターも務める奥さま。「長野県自然保護レンジャー」として北アルプス地区の山岳環境保全に取り組むご夫妻にとって、大好きな北アルプスの麓に広がる安曇野は、いつか住みたいと思っていたあこがれの地だった。

周囲の森と調和した外観。片流れ屋根の平屋にすると最初から決めていた。来春には広大な南側の庭全面を芝生にする予定だ

ログハウスはTALOインターナショナルのもので、延床面積およそ70㎡というコンパクトな平屋。森に面する南側にはカーテンウォールの大開口があり、リビングにさわやかな光がたっぷり入るようになっている。外壁の淡いグレーの塗装は、本来2度塗りをする予定だったが、1回目の塗装を済ませた時点での色が気に入り、そのままクリア塗装で仕上げたもの。この絶妙な色が、自然の中にナチュラルになじんでいる。

絶妙な距離感で使いやすいダイニングキッチン。お揃いのカラーのキッチンカウンターと丸いダイニングテーブルは、室内ドアと同じ工房に依頼して作ってもらった

「もともとは在来構法でカフェ風の家を建てるつもりでしたが、終の棲家として70代、80代になっても暮らせる家と考えたら、やっぱりログハウスがふさわしいと考え直しました」とご主人。実際にログハウスに住んでみると、木のぬくもりや香りが感じられ、日々をやさしい気持ちで過ごすことができるのだそうだ。

1.2m張り出したカーテンウォールの内側は、サンルームのような空間。ヨガインストラクターの奥さまは、ここでヨガを行うことも多いそうだ
デッキにはガーデン用のテーブルとチェアを設置。木々に囲まれた空間で、好きなお酒や食事を頻繁に楽しんでいる

「本当に必要なものだけに囲まれて暮らしたいと思ったので、家を不必要に大きくせず、収納も最低限にしています。そのほうが『丁寧な暮らし』ができると考えたからです」とご夫妻は話す。 あえてテレビを置かない生活を送り、鳥のさえずりを聴きながら朝食を楽しんだり、好きな音楽を聴きながら薪ストーブの火を育て、グラスを傾けたりするのが至福の時間。日々移り変わる美しい森や澄んだ空気に囲まれる、本当の意味で豊かな暮らしが、ここにはあるのだ。

【  Detail  】

≪リビングダイニング≫

DK側から見たリビング。シンメトリーなドアの配置が印象的
薪ストーブは、カナダのメーカーSBI のドロレ・デコ。タイル敷きの炉台は、床面と高さを揃えている。揺れる炎を眺めながら一杯というのが最高の時間だそうだ
炉台の後ろの壁は、板を縦張りにして変化をつけた。木の壁の中でアクセントになっているグリーンのドアは、京都の工房にオーダーして作ってもらったもの
おいしいお酒に、おいしい料理。あこがれていた安曇野の地にこだわって建てたログハウスで、こんなすばらしい夜を過ごしている
道具のひとつひとつもこだわって選んでいる。これは石川のアイアンワークス・コルという工房が作っている鉄製のフライパン。無骨さがいい

≪外観≫

エントランス側の外観。平屋ならではのロー&ワイドなフォルム
かわいらしい白い玄関ドアには、ナチュラルカラーのアイアンプレートが
ソファやベッドがついたキャンピングカー仕様のハイエースがいつもの旅の宿。これで全国の山を旅している

≪寝室≫

家の北西側に位置する寝室。輝く朝日と鳥の声とともに、毎日気持ち良く目覚められるそうだ。「とても非日常的な日常です」とご主人
寝室の脇に設けた隠れ家のような書斎で原稿を書くご主人。バリバリのアウトドアマンで、登山や車中泊などの記事を書くライターとして活躍している
吊り戸で仕切れる寝室の隣のゲストルームは、いつもは愛犬のミニィちゃんとプティちゃんがくつろぐ部屋になっている。左側の上部は、荷物を載せておけるロフト収納だ

≪サニタリー≫

グリーンの扉の向こうは洗面所。配管あらわしで収納も少なめにしたシンプルな造りだが、機能的には必要十分だ
ご夫妻が気に入っているというステンドグラスを使ったペンダントライトが、やさしい光を放っている
洗面カウンターはログメーカーの造作。スクエア型のボウルはイタリア製で、ブラックの水栓と合わせ、ホテルライクに仕上げている

【DATA】 ●使用目的/自宅 ●家族構成/夫婦 ●使用ログ材/フィンランドパイン(W11.2 × H19.2cm) ●ストーブ/ SBI「ドロレ デコ」 ● 敷地面積/864.24㎡(261.43 坪) ●床面積/ 1F 70.80㎡(21.41 坪)、延床面積70.80㎡(21.41 坪)

取材・文/原 太一、写真/関根おさむ(一部を除く)