令和2年度ログハウス建築コンテスト優秀賞受賞作品「Hygge Chalet Hakuba」

一般社団法人日本ログハウス協会が主催するログハウス建築コンテストにおいて、優れた建築に対し与えられる令和2年度の優秀賞(公益財団法人 日本住宅・木材技術センター理事長賞)を受賞した、㈱JIN の作品を紹介しよう。

長野県・加藤さん

設計・輸入・施工/(株)JIN

白馬の林の中に建つこだわりの木の家でくつろぎの時間を過ごす

高い吹き抜けと一面の大きな開口で、開放感たっぷりのリビング。加藤さんご家族が座るソファは、イタリアのニコラインのもの

10 代にカナダの世界的なリゾート地、ウィスラーで数年間を過ごした経験を持つ加藤さん。そのときはログハウスをルームシェアして暮らしていたが、いつか自分もこんな家を建てたいと考えたそうだ。そして、それから十数年が経ち、子どもの誕生を機に長野県白馬村へ移住することになった加藤さんが選んだのは、㈱JIN の家だった。

雪が多く降るエリアなので、南側の屋根をのばし、車庫スペースにしている。玄関ドアの周囲の壁は、重厚感ある石張りで仕上げた

細部にまでこだわった家づくり。ゆるい勾配の大屋根が安定感ある外観はまるで北欧の高級別荘のようだが、外壁や軒天を北米産のウエスタンレッドシーダーで仕上げたり、玄関部分をエイジングストーンの石壁にしたりすることで、ラスティックな雰囲気を加えている。

開放的な空間デザイン、気持ちを豊かにしてくれる家具、揺れる炎を楽しめる薪ストーブ。優雅な時間を過ごすのにぴったりのリビングだ

そして、玄関を入ると高い吹き抜けと一面の大開口で、声を上げたくなるほど開放的な広いリビング。明るめのオールドヒッコリーの床、ウエスタンレッドシーダーの壁と天井、パインの極太の梁など木に囲まれ落ち着いた空間だが、そこに黒い鉄骨階段やブラックカラーのスイッチ類を取り入れることで、スタイリッシュで洗練された雰囲気をつくり上げている。また、加藤さん自らが選んでいるインテリアや雑貨のセンスの良さもみごとというよりほかない。

モダンな雰囲気で統一したダイニング。こちらも大きな窓から白馬の美しい森が眺められる。ボナルドのテーブル、カリガリスのチェアなど、家具へのこだわりがすごい

加藤さんは、ご夫妻で実際に世界を歩いて数々の建築を見たり、インターネットでアイデアを探したりして理想の住まいのイメージをつくり上げた。そして、メーカーはそのイメージにさらにアイデアを加え設計に落とし込んでいる。白馬に堂々と立つこの家は、オーナーとメーカーの家づくりへの情熱が生んだ、まさに傑作だ。

【  Detail  】

≪リビング≫

室内には、パイン集成材の太い梁が走る。壁材と天井材は、ウエスタンレッドシーダーの板張り。場所によって色を変えて変化を出している
薪ストーブは、ヨツールのF 520。フロントだけでなくサイドもガラスになっており、リビングで焚き火をしているかのような感覚が味わえる
床暖房で足元あたたか。床材はヴィンテージ感あるオールドヒッコリー。幅広の材を使っており、空間に落ち着きと広がりが感じられる
上・中・下/材の粗く仕上げた面をあえて表側にしたり、洗面所のカウンターや化粧テーブルに耳つきの材を使ったりして、ラスティックな雰囲気を出している加藤邸。北欧モダンの家に北米の材を使ったり、ラスティックに仕上げたりしているのが個性的だが、これは若い頃をウィスラーで過ごした加藤さんが「カナダの色を加えたかったから」なのだそう

≪ダイニング≫

ダイニングのペンダントライトは、ヴェネツィアの照明ブランド、フォスカリーニのもの。コンクリート製のシェードの存在感は格別

≪寝室≫

ダイニングの奥にある主寝室。天井が高く広々としており、落ち着いて眠れる。窓の外に見えるスペースは、バーベキューも楽しめるテラスだ
2階の寝室。こちらは隠れ家っぽい雰囲気。2 階にはもうひとつ寝室があり、最大8 名まで利用することができる

≪サニタリー≫

耳つきの材を使って鏡に額縁を造作。また、洗面台の天板の囲い板にはあえてラフ仕上げの材を使い、重厚感を出している
バスルームの壁は耐朽性が高い素材としても知られているウエスタンレッドシーダーの板張り。床は重厚な黒いタイル仕上げ

【DATA】 ●使用目的/別荘 ●家族構成/夫婦+子ども1人 ●ストーブ/ヨツール「F520」 ●敷地面積/734.33㎡(222.52坪) ●床面積/1F 187.80㎡(56.9坪)、2F 57.76㎡(17.5坪)、延床面積245.56㎡(74.41坪)

取材・文/原 太一、写真/関根おさむ