コーヒーの香る豊かな暮らし【ライフスタイル編】

神奈川県・葉山の里山に建つログハウスのオーナーは、四輪駆動車を愛するコーヒービーンズショップの店主でもある。遊び心をちりばめた自分流の暮らしと、オーナー直伝のおいしいコーヒーのいれ方をご紹介。まずは暮らしぶりをのぞいてみよう。

神奈川県 山口さん

コーヒーと四駆とログ、どれも手をかけると味が出ます

里山の自然に囲まれた山口さん宅

緑あふれる里山に建つ山口さん邸は、大きな折れ屋根の山小屋風ログハウスだ。何といっても、愛車「jeep cj-7」のために設えた大きな岩のカースペースが目を引く。「庭師さんが車で岩を上る写真にインスピレーションを得たらしく、ごつごつとした庭になりました(笑)」と山口さん。楽しそうに語るが、以前は、ログハウスどころか家を持つことを考えてもみなかったという。導いてくれたのが愛車だった。 「住宅展示場に行ったことはあるけど敷居が高くて敬遠していました。横須賀に通っていたクルマ屋さんがあって、そこの社長が『頻繁に来るなら引っ越してくれば』と」 そのひと言をきっかけに葉山町にアパートを借りて住み始めたところ、海と山に囲まれたのんびりとした暮らしが気に入った。ここに住みたいと思ったら、一転、家が欲しくなったという。「住むなら木の家がいい」というのがご夫妻の合意。そこで浮かんだのが、ログハウスだった。2016年秋に完成し、その後は自分たちで家具を作ったり、薪ストーブ用の薪を割ったりと、家で過ごすことが多くなったという。

玄関を入ると広がる土間リビング。休日は、「ログハウスを建てたら買う」と決めていたお気に入りのソファでくつろぐ

玄関から広がる「土間リビング」はご夫妻のお気に入りで、休日はソファに座ってゆっくりと過ごす。来客が増え、「ここに来ると落ち着くね」と言われるのが、このログハウスにして良かったと感じる瞬間だという。

コーヒー豆をミルで挽く山口さん。ガリガリと心地良い音が響く。一般的なペーパードリップなら、少しざらっとした中細挽きくらいで
焙煎には手まわしの焙煎器を使う。時間と温度のほか、色、香り、音をききわける経験と感覚も必要だという
ゆっくりとお湯を注ぐにつれてコーヒーの香りがログハウスに広がる。ログハウスで薪ストーブを眺めながらコーヒーを飲むのが、山口さん理想のシチュエーション

山口さんがビーンズショップを始めたのは、ログハウスがきっかけだ。「実は、僕も妻もコーヒーが苦手。でもログハウスで薪ストーブときたらコーヒーだ、と思ったんです」 最初はカタチから入った。「僕がおいしいと思うコーヒーを作りたい」と、あらゆる豆を試したものの、どうして腑に落ちない。しかしあるビーンズショップのオーナーと出会い、カギは豆の焼き方だと気づく。独学で自家焙煎を始め、試行錯誤の結果、奥さまもおいしいと言ってくれるコーヒーができ上がった。独学にこだわるのは、「教わるとその人の好みが強くなる。自分の好きなコーヒーを作りたいから」というポリシーからだ。

晴れた日、鳥のさえずりが聞こえるウッドデッキでコーヒーをいれてくつろぐ。「私が話好きなので、ずっとおしゃべりしています」と奥さま

山口さんが庭でコーヒーを焙煎したり薪を割ったりする間、奥さまはリビングでくつろいだり、料理に腕をふるったり。ご夫妻それぞれ、ログハウスの暮らしを楽しんでいる。

【  Detail  】

≪ホビー≫

山口さんが薪をくべているのは、「チムニーストーブ」というメキシコのストーブ。コンパクトで使いやすく、庭での火遊びにちょうどいい
自家製のスモークチーズ。友人が集まったときなどにふるまうと、こんなにたくさんあってもあっという間になくなってしまう評判の一品
愛車でタイムトライアルレースに参戦したり、イベントに参加したりする。ロッククローリングという岩場を登る写真は、山口さん邸の庭の構想の原点
愛車を自分でカスタマイズするのも幸せなひと時。会社員時代は休日ごとに通い詰め、そのおかげで住みたい場所を見つけ、ログハウスを建てた

≪カースペース≫

カースペースは、無骨な富士黒石を組み合わせた、まさに四輪駆動車のための特別仕様

≪LDK≫

土間から一段上がる形で続くダイニングキッチン。住み始めて4年半、経年変化で天井や床も味わいが出てきた
山口さんが作ったキッチンの棚。段違いで棚がつけられ使い勝手がいい。コーヒーの生豆やメジャーなどを置いている
「キッチンの壁に掛けたときに絵になるフライパンを」と奥さまが選んだバーミキュラのフライパンで作ったフレンチトースト。朝食にぴったり

≪玄関≫

玄関横のシューズクロークは造りつけだが、その上のラックは山口さんの手作り。金網を利用し、薪割りで使うオノや溶接用の手袋など、外づかいの道具掛けとなっている

≪作業部屋≫

玄関正面奥にある作業部屋。パソコンを使ったり、コーヒー豆の発送作業などをしたりする。土間からもダイニングキッチン側からも通り抜けできる
焙煎に使うエプロンや作業着などを手作りのフックに掛けて

≪寝室≫

2階寝室にあるドレッシング用の棚は、奥さまのオーダーで山口さんが作った。1階のインテリア同様、古材にアイアンの脚を組み合わせた
手触り良く作られた天板。ふだんづかいのアクセサリーやバッグなどが置かれている。会社勤めをしている奥さまがサッとしたくできるように引き出しを設けずシンプル

取材・文/上田里恵