【Since】30年以上通い続けるハンドカットは自然と触れ合う趣味のアトリエ

長野県・Mさん

自然を身近に感じられる拠点が楽しい人生をもたらした

東京での生活に何か満たされないものを感じていたMさん。原因を考えて思い当たったのは、日常生活の中で山が見えないことだったという。雄大な自然の象徴としての〝山〟を身近に感じられる環境を求め、「山の見える所に小屋が欲しい」と、別荘を建てることに。Mさんご夫妻はログハウスの知識はまったくなかったので、建築はログビルダーになっていた長男に一任した。

開放感あふれる吹き抜けのリビング。大人数のゲストを招いたときでもゆったりくつろげる。大きな窓からたっぷり光が入り、さわやかな雰囲気

でき上がったログハウスで特に気に入った場所は、リビング。「吹き抜けの開放感や大勢で集まれるところがいいですね」とMさん。地下室を造るとは思いもしなかったが、実際に使ってみると便利でとても重宝している。キッチンの後ろに流しと洗濯場を設けたことも動線が良くなり大正解だったという。 ログハウスの快適な住み心地に最初は驚いた。「気持ちも暮らしも豊かになり、楽しい人生をもたらしてくれました」と語ってくれた。

作ったカゴはここで大切に保管。ここの中から選んで作品展などに出品することも

当初は別荘として建てたログハウスを、今では二地域居住の拠点として頻繁に利用しているMさん。こちらにいるときの最大の楽しみは、自然の中にある枝やツル、木の皮などを使った趣味のカゴ作りだ。素材を手に入れるのがいちばん大切であり、いちばんの苦労でもある。「素材との出会いは一期一会。同じものは絶対にありません」とMさん。作り手の思うようにならないこともままあるが、よく研究して形にしていくことが醍醐味だという。

普通は切り落としてしまう部分をあえて使うことでオリジナルな模様を生み出した

また、素材を手に入れようと山に入っても、勝手に取るわけにはいかない。地元の人たちの了承を得て、調達させてもらっている。でき上ったカゴは、「地元の人たちの好意」と、手に入った「気難しい素材」と、「つたない自分の作業」の合作だという。 素材の種類、大きさ、状態などによって製作にかかる時間はまちまちで、長くかかるものは半年、一年以上かかることも。「気の長い根気のいる作業ですが、好きでずっと続けてきました。多くの方のお世話と出会いのおかげで、感謝あるのみです」とMさん。1987年に完成したログハウスとともに過ごして30年余。年月を経て風格を増した木づくりの空間が、ナチュラルクラフトを楽しむ暮らしを支えている。

【  Detail  】

≪ウッドデッキほか≫

室内と屋外の林の間にはウッドデッキが広がる。リビングからすぐにアクセスできる、「もうひとつのリビング」といえる空間だ
ウッドデッキの手すりはベンチ兼用。場所を取らないすっきりしたデザインが秀逸だ。ここに座れば、まわりの木々に包まれたような気分が味わえる
年数を重ねて塗装を繰り返し、新築時にはない風格が漂う。屋根と破風には銅板を使用してメンテナンスフリーに

≪リビング≫

リビングのペンダント照明は住みながら何年も探して手に入れたお気に入り。床暖房を入れてカーペットを敷き、薪ストーブを併用してあたたかく快適な空間に仕上げた
うねるような曲線が連続するアーチカット。太いログならではのボリューム感を生かしたデザインだ。樹種はダグラスファーを使用
ストーブの手前の木は、薪ではなくカゴづくりの素材。Mさんにとってはどれも思い出が詰まった大切な存在だ

≪ダイニングキッチン≫

冷え込みの厳しい土地だけに、ダイニングキッチンにも床暖房を設置。こことは別にサブキッチンがあり、用途によって使い分けている

≪廊下≫

ログ以外の間仕切り壁は漆喰で仕上げた。白壁と木のコントラストが美しい
室内ドアは、カナディアンシーダーをオイルスティンで仕上げたもの。緻密な木目は見ごたえがある。建築当時は普通に入手できたが、今では希少になったそう

≪サニタリー≫

床以外は木に囲まれたナチュラル感満点の浴室。浴槽は木曽の桶屋さんにオーダーしたもの
30年以上使っているがログ壁は健全な状態を維持できている。ふだんから換気を心がけている効果も大きいはず

【DATE】 ●使用目的/別荘(二地域居住) ●竣工/ 1987年 ●使用ログ材/ダグラスファー(φ約30cm) ●床面積/ 1F 103㎡、2F 71㎡

取材・文/編集部、写真/関根おさむ