【Since1987】30年以上通い続けるハンドカットは自然と触れ合う趣味のアトリエ
長野県・Mさん
自然を身近に感じられる拠点が楽しい人生をもたらした
東京での生活に何か満たされないものを感じていたMさん。原因を考えて思い当たったのは、日常生活の中で山が見えないことだったという。雄大な自然の象徴としての〝山〟を身近に感じられる環境を求め、「山の見える所に小屋が欲しい」と、別荘を建てることに。Mさんご夫妻はログハウスの知識はまったくなかったので、建築はログビルダーになっていた長男に一任した。
でき上がったログハウスで特に気に入った場所は、リビング。「吹き抜けの開放感や大勢で集まれるところがいいですね」とMさん。地下室を造るとは思いもしなかったが、実際に使ってみると便利でとても重宝している。キッチンの後ろに流しと洗濯場を設けたことも動線が良くなり大正解だったという。 ログハウスの快適な住み心地に最初は驚いた。「気持ちも暮らしも豊かになり、楽しい人生をもたらしてくれました」と語ってくれた。
当初は別荘として建てたログハウスを、今では二地域居住の拠点として頻繁に利用しているMさん。こちらにいるときの最大の楽しみは、自然の中にある枝やツル、木の皮などを使った趣味のカゴ作りだ。素材を手に入れるのがいちばん大切であり、いちばんの苦労でもある。「素材との出会いは一期一会。同じものは絶対にありません」とMさん。作り手の思うようにならないこともままあるが、よく研究して形にしていくことが醍醐味だという。
また、素材を手に入れようと山に入っても、勝手に取るわけにはいかない。地元の人たちの了承を得て、調達させてもらっている。でき上ったカゴは、「地元の人たちの好意」と、手に入った「気難しい素材」と、「つたない自分の作業」の合作だという。 素材の種類、大きさ、状態などによって製作にかかる時間はまちまちで、長くかかるものは半年、一年以上かかることも。「気の長い根気のいる作業ですが、好きでずっと続けてきました。多くの方のお世話と出会いのおかげで、感謝あるのみです」とMさん。1987年に完成したログハウスとともに過ごして30年余。年月を経て風格を増した木づくりの空間が、ナチュラルクラフトを楽しむ暮らしを支えている。
【 Detail 】
≪ウッドデッキほか≫
≪リビング≫
≪ダイニングキッチン≫
≪廊下≫
≪サニタリー≫
【DATE】 ●使用目的/別荘(二地域居住) ●竣工/ 1987年 ●使用ログ材/ダグラスファー(φ約30cm) ●床面積/ 1F 103㎡、2F 71㎡
取材・文/編集部、写真/関根おさむ