セトリングって何だ ? [ 前編 ]

ログハウスに興味を持つようになったら、セトリングという言葉を聞く機会があるはずだ。 今回は、自然素材の木をほぼそのまま使うログハウスならではのこの現象について学んでみよう

自然素材を使うログハウス特有の現象がセトリング

ログ材に含まれた水分は、建築後も蒸発し続ける。そうして乾燥が進むとログ材は少しずつ細くなってくる。また、ログ壁自体の荷重によってログ材とログ材の密着性も高まり、ログ壁が下がってくる

セトリングとは、年月が経つことでログハウスに生じる変化のひとつで、徐々に壁が下がってくる現象のことである。

機械乾燥させるマシンカットログハウスは3% 以内。自然乾燥のハンドカットは約5% といわれるが、材により差が大きく、もっと下がることもある

ログ壁が下がる主な原因は、ログ材の乾燥だ。木に含まれる水分の割合を含水率というが、生木であれば含水率が100%以上あるのが普通。それをログ材に加工するときに、マシンカットなら人工乾燥により20%以下にまで落とすのだが、それでも内部に水分が残っている。

一般的には、日が当たる南側や西側のほうがセトリングは早く進む。また、薪ストーブなどの暖房により、室外より室内のログのほうが乾燥が早く進む
マシンカット材でも、木をそのまま使う無垢材タイプのものと、何枚かの材を張り合わせるラミネートタイプのものがあり、ラミネートタイプのほうがセトリング量は少ない

壁が下がるってどれくらい?

壁が下がるというと、気になるのはその量だが、マシンカットならその量は全体の3% 以内といわれている。つまりログ壁の高さが280㎝であれば、下がる量は8.4㎝以内となる。しかし、この数値はログ材の含水量によって変化するので、メーカーによって、またログ材の種類によっても大きく差が出るものである。

セトリングっていつまで続くの?

セトリングはいつまでも続くものではない。その幅が大きいのは築年数が浅い時期で、3 年もすれば大きい変化はなくなる。そして5 年ほどで収まるのが普通だ

セトルとは英語で落ち着くという意味で、セトリングもいずれは「落ち着く」ものである。ログ材の乾燥は、建築年数が浅いほど早く進むので、最初のうちほどセトリング量は多く、次第に少なくなっていく。最終的に落ち着くまでの年月の目安は3 ~ 5 年。ハンドカットの場合はもう少し時間がかかることがある。

セトリングで問題が生じる箇所と対応策

建具はログ壁に直接固定せずT バーという部材によりスライドさせる。また、壁が下がるスペースをあけておき、壁がぶつからないようにする

セトリングに対応するためには、ログハウスのいくつかの場所で建築の工夫や建築後の調整が必要となる。代表的な場所はドアや窓などの建具周辺で、壁が下がってきても建具の高さはそのままなので、何もしないと建具が圧迫されてしまう。とはいえ、ログハウスはセトリングを想定して建てられているので、心配は無用だ

縦方向の柱

材の収縮は、材の垂直方向にはほぼ生じない。そのため、材を縦に使う柱があると、壁との間に高さの差が生じてしまう。ここはジャッキボルトを入れておいて調節する

オーバースクライブとは

ハンドカットだと、ノッチでないところにわざとすき間をうけるオーバースクライブという技もある。これでいずれすべてぴったりおさまるのだ

通しボルト

ログ壁のログエンド近くには、通しボルトが上から下まで貫通して入っている。壁が下がればこれが緩むので、増し締めしなければならない

階段

階段のセトリング対応にはいくつかの方法があるが、いずれも階段の上下どちらかをログ壁や床、天井と固定しないことがポイント。下がったときに調整が必要になる方法もある 左/上部は2 階床に固定するが、下部を床に固定せず前にスライドさせる。側板のかかと部を丸く削っておくことも多い 右/これも上部を固定するが、下部にスペーサーという板材を何枚か挟んでおき、下がってきたら抜いて高さ調整を行う

構成・取材・文/原 太一、イラスト/内藤しなこ

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