かけがえのない癒しの場として32年間ログハウスを愛し続ける

長野県・森田さん ●設計・施工/(有)ウッドフォルム

木工や自然観察、サウナで心と体をリフレッシュ

ふだん東京で神経を使う仕事をしている森田さんは、時間ができると車を飛ばして八ヶ岳山麓に移動。ログハウスで心身をリフレッシュする二重生活を32年も続けている。

このログハウスは1988年に完成。以来、東京ではできない木工や自然観察などを楽しんできた。「ログハウスの中は別世界。本当に心が休まります。まったく飽きませんね」と森田さん。真冬にサウナで汗を流し、素っ裸で裏手の森に面したテラスに出て涼むのもお気に入りだ。

ログハウスの手入れも、遊びの一環としてこまめに行ってきた。山奥なので業者に頼むより自分でやった方が手っ取り早い。それに、かわいいログハウスの面倒を自分でみてあげたい、というのがその理由。主に行うのは外壁の塗装だ。「ログハウスだから自分で手入れができる。例えばRC造の自宅は、こうはいきません」と森田さん。長年手をかけてきたログハウスは、ますます愛着が深い大切な場所になっている。

左/隣接するゲスト用のポスト&ビーム棟のサンルーム。薪ストーブがあるので、真冬でも自然観察ができる 右/森田さんが手づくりしたカウンターとスツールこういった家具や小物を作るのも楽しみのひとつ

風通しと軒の深さ、定期的な外壁塗装。この3要素がログの寿命を左右する

骨格がむき出しであることは欠点であり利点でもある

このログハウスを建てたウッドフォルムの次山哲哉さんは、建物が30年以上も健全な姿を保っている理由が3つあると分析する。ひとつ目は、風通しが良い土地を選んだこと。木が密生した窪地などは、湿気がたまりやすく、腐りを招きやすい。ふたつ目は、軒の出が最大約2mと深いこと。ログ壁を雨に当てないことが健全さを保つ原則なのだ。3つ目として、オーナーの森田さんがこまめに外壁を塗装してきた功績が挙げられる。

「ログハウスはダイナミックに見えますが、建物を支える”骨“の部分がむき出しなので、実はデリケートな面も。雨や湿気から守ることで、木材腐朽菌を寄せつけないことが大切です」と次山さん。とはいえ、傷みが目に見えることはメリットともいえる。見えないところで腐りが進行するより対処しやすいからだ。

「海外では築400年以上のログハウスを見ました。きちんと手入れをしていれば、日本でも築後32年経ってもびくともしない。むしろこれから味が出てくる。そういう点が、一般的な木造住宅との大きな違いでしょう」と次山さん。長い時間をかけて育った丸太を大量に使う建物だけに、使い捨てにするのはあまりにもったいない。逆に、時間をかけてはぐくんだ味わいは、オーナーにとつてかけがえのない価値を持つ。分解・再組立てができる構造なので、移築・転売して新しい用途に活用することすら可能だ。「世代を超えて長年愛し続けるに足るのが、ログハウスという存在なんです」。

取材・文/編集部 写真/関根おさむ

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