煙突と炉台のジオメトリー【その④】

安全性を考えると、薪ストーブの配置計画はプロにおまかせしたい。しかし、煙突や炉台を設置する際のセオリーを知っておけば、より安全で合理的な「薪ストーブがある住まい」づくりに役立つはずだ。

取材協力/エープラス

煙突は屋根出しがいいの?

屋根出しか壁出しにするかは、家のデザインなどから判断して最も効果的な場所を選んでから決定をするといい

一概にどちらがいいとはいいにくい。建物の形状などから煙突の位置を決め、そこから屋根出しか壁出しかを選ぶようにするのが合理的だ。 一般的に煙突は曲がりがあるとドラフトに不利とされ、煤もたまりやすい。このことから屋根出しが推奨されていることが多いが、煙突のオフセット量が少なく、十分な煙突の吸引性能が確保でき、雪による損傷リスクが少ない妻壁側ならば問題にすることもないだろう。むしろ気をつけたいのは、屋根出しにこだわるあまり、高い場所に屈曲部を設けて無理に吹き抜け空間に煙突を通すことだ。ちなみに、薪ストーブの歴史が長いヨーロッパでは、吹き抜け空間などの空中に長い煙突がある例を見ることは少ない。

屋根上の煙突の高さは、米国NFPA規格を日本でも採用している。煙突が棟から3m以内の場合、棟の高さから600㎜ 以上、全長900㎜ 以上にする。棟から3m以上離れている場合、煙突の先から600㎜ 下ろした位置で屋根より3m離す

壁出しの場合、煙突を曲げるのは最小限にとどめたい。壁から出ている煙突が何カ所も曲がっているのは美しくないし、ドラフトも起きにくい。吹き抜けの2階部分の壁から煙突を出すと吸引圧力が弱まるので、1階から煙突を壁に沿わせるように取りまわし、さらに屋根を貫く壁などで囲むと煙突が冷えるにくく、機能面でも有効に働く。 なお、屋根の上の煙突の高さは左図のように施工するが、雪が深い地域では、積雪の高さも考慮する必要がある。

屋根上に強い風が吹くと、屋根に風がぶつかって気圧が高くなる。低い煙突の場合、気圧が低い室内に煙が逆流してくる

取材・文/押田雅博、イラスト/内藤しなこ

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