家づくりを楽しむことが目的のハーフビルド。作業はまだまだ継続中!

田舎でしたいこと、街でしたいことのどちらも手に入れたい。そんな思いをかなえられる「二拠点生活」が注目を集めています。今回はそんな二拠点生活を送る渡辺さん邸をご紹介します。

渡辺さん

設計/アペント㈱ 施工/アペント㈱+セルフビルド

ログハウス作りは最高に楽しい遊び

模型を作りプランを立てたこの家は、屋根の左側をカネ勾配、右側を5寸勾配にしたアシンメトリーなデザインで、棟も駆体中央から少しずらしている

神奈川県相模原市に自宅を持つ渡辺さんご夫妻は、毎週休みのたびに、ここ山梨県の別荘地に建てたログハウスを訪れる。 ここに来るのは、優雅にくつろぐため、ではなく自分たちのログハウスを完成させるため。ご夫妻は、メーカーに躯体工事までを依頼し、あとの内装を自分で行うハーフビルドにチャレンジ中なのだ。

ハーフビルドするのにログハウスを選んだのは、壁を作る必要がないから。ログを積めばそれで壁ができるログハウスは、手作りに最適な家なのだ

「昔からログハウスのセルフビルドにあこがれていたんですが、自分だけで全部やるのは難しい。そこでログメーカーのアペントさんに手伝ってくれないかとお願いしたんです。メーカー的にはかえって面倒なお願いだと思いますが、気持ち良く引き受けてくれてありがたかったです」

1/50 の精密な模型をいくつも作りプランを練った。白模型は100 個以上作ったという。「ログづくりは1/1 の模型を作っているようでした」

屋根を掛けてからかれこれ1年の間、床板を張ったり、キッチンを造作したりとDIYを続けているが、いまだに住まいは未完成。しかし、 それでいいのだと渡辺さんは笑う。「作ること自体が目的なので、むしろ終わらせないようにしています。家づくりはわからないことだらけですが、それをどうするのか考えるのがおもしろい。おもしろすぎてゴルフなどほかの趣味はまったくやらなくなってしまいました(笑)」

上2点/ご夫妻が仲間とともにハーフビルド

ただし、手作りとはいえログハウスのでき映えはプロ顔負けだ。7度も重ね塗りした外壁は滑らかでピカピカだし、玄関タイルも狂いなく張られている。また、竹の集成材を使ったキッチンや、ステンドグラスを入れたトイレのドア、階段上の収納棚など、素材や仕上げに徹底的にこだわっているのがわかる。

Dログの壁は、サシュコの塗料を使い7層も塗装
デッキも自作で、愛犬のファインちゃんがくつろぐのに最適な場所だ

「家づくりはこの家を建ててくれた大工さんの仕事を見て覚えました。どの作業も慣れてようやくできるようになった頃に終わってしまうのが悔しいんですよね」 今週はテーブルと椅子の仕上げやキッチンのゴミ箱づくり。それが終わったら2階に置くベッドづくりに取りかかる予定だというおふたり。終わりのない家づくりをまだまだ楽しむつもりのようだ。

【  Detail  】

≪リビングダイニング≫

1階の床面積は50㎡弱、延床面積は80㎡弱。室内の塗装はオスモを使用している。セルフビルドだが、どこも丁寧に施工してある
芸術的なキリムを各所にあしらっている。キリムの重厚感に負けない力強さを持つローテーブルも、もちろん自分で作ったもの
階段の手すり部分には、余ったログ材をカットして取りつけている。ハンギングプランターを取り入れるなど、観葉植物の飾り方もおみごと

≪キッチン≫

黒く引き締まった印象のキッチンの天板は竹の集成材。手前のダイニングテーブルも自作で、足場板を使いラフな感じを出した

≪2階≫

建築資材が置いたままの2 階。ベッドづくりもこれからだ。また、渡辺さんは石油ストーブ派で、レトロなニッセンのストーブを愛用
2階の棚には奥さまのファイヤーキングのコレクションが。柵と棚を兼ねるアイデアは、建築家の前川國男さんの自邸を参考に

≪サニタリー≫

トイレの前に位置する洗面所。白くシンプルなボウルを使ってモダンに仕上げている。天板が広くて使いやすい

≪玄関≫

玄関はリビングのフロア高さと段差をつけずフラットにした。深みのある色合いのタイルをきれいに張っている

【DATE】 ●家族構成/夫婦 ●使用ログ材/レッドパイン(D 型ラミネート、W13.8 × H20.3cm) ●ストーブ/ニッセン「KS-3B 1967 年製」「BS-3 1965 年製」 ●敷地面積/759.00㎡(229.59 坪) ●床面積/ 1F 48.60㎡(14.70 坪)、2F 30.04㎡(9.08坪)、延床面積 78.64㎡(23.78 坪) ●総工費/約2370 万円+税

取材・文/原 太一、写真/松井 進