ハンドカットが人気のメーカーが迫力満点のマシンカットを開発

日本の森林の4割を占める人工林で「使って植える」サイクルがもっと活性化すれば、環境保全に役立つことは間違いない。一般住宅の3倍も木を使うとされるログハウスに、国産材を活用する意義は大きい。そんな国産材を生かしたログハウを見てみよう。

長野県・山添さん

設計・施工/(株)JIN

国産材使用推進にログハウスは最適の建物

6×7mのログハウス。三角屋根の両側にシェッドドーマーをつけた2LDK。両サイドの壁を長くのばしてウッドデッキを囲んだデザインも新鮮

森の中のコンパクトなログハウスは、ログメーカーJINの最新作。同社は大径材のハンドカットをはじめとするダイナミックなログハウスを得意とし、この家もマシンカットながら21㎝角もある太い角ログを使っている。しかも、総ヒノキという、今までにないログハウスだ。「ハンドカットに匹敵するようなマシンカットを目指して、この太い角ログを作りました」と語るのはJINの代表・小池さん。「SDGsの関係もあり、いま世界的に木造建築が人気で木材は品薄に。ウッドショックや紛争、さらに円安の影響で輸入材は本当に手に入れにくくなっています」。そこで目をつけたのが国産材。ログ材がそのまま外壁になるログハウスだから、耐久性のあるヒノキを選んだ。

あまり見かけない断面が正方形の角ログは、JIN のオリジナル。外壁はグレーに塗装したが、ヒノキの脂が強いせいかあまり発色しなかったという

国の木材利用推進の方向性も、「間伐をして森の手入れを」という方針から、森を更新するために成長した古い材を伐る大径材推進に変わってきている。「そのおかげもあり、ログハウスにも適した太い材が手に入りやすくなっているんです」。 太く成長したヒノキの原木を国内の工場で加工したオリジナルログで、今後はスギを使って30㎝角のログを造る予定もある。「これができたら、ハンドカットよりも迫力のある家になるかも」と今から楽しみな様子の小池さん。

上・下/1階は片面にコンパクトなキッチンとサニタリールームをまとめて配置し、リビングを最大限広く設けた。窓もそれぞれ大きく開放的

このログハウスのオーナーは、これまでJINで2棟のハンドカットを建てた、ログコテージを営む山添さん。「ヒノキのマシンカットをすすめられたときは驚きました。ヒノキのログは見たことがなかったし、費用もかかりそうでしょう」と笑うが、完成してみるとハンドカットに負けない迫力と、家いっぱいに広がるヒノキの香りに大満足。「お客さんにも木の香りに癒されると人気です」。画家でもある山添さんも、時折アトリエとしても使っている。 新たなスタイルで造られたヒノキの大径材マシンカットログ。今後の進化も楽しみだ。

【  Detail  】

≪ログ材≫ ヒノキ(W21×H19.5cm)

この家に使ったヒノキは天然乾燥材のため特に香りが強い。密度が高く脂が強いため、スギやパインに比べて、しっとりときめ細かい手触りだ

≪ウッドデッキ≫

上・下/オーナーの山添さんとお孫さん親子と。デッキ全体を屋根で覆い、壁も設けたので、アウトドアリビングとしても使いやすい。プライバシーも確保できた

≪リビング≫

洋画家として海外でも個展を開く山添さん。ここ軽井沢の自然を中心に、旅行や仕事で訪れた海外の風景なども描く
上・下/ログ壁以外の構造部や階段にもヒノキを使用。家中にヒノキ独特の香りが満ちている
床はカバノキ科の広葉樹、アルダーのフローリング

≪寝室≫

2階には個室がふたつ。屋根裏タイプの2 階だが、どちらにもドーマーを設けているので圧迫感のない個室になっている

≪サニタリー≫

上・下/1階の角にまとめて配置したサニタリールーム。面積の小さいトイレや洗面所は、いっそうヒノキの香りが強く感じられる

【DATA】 ● 使用目的/ 簡易宿泊施設 ● 使用ログ材/ヒノキ(W21×H19.5cm) ● 敷地面積/798.23㎡(239.70坪) ●床面積/1F 60.90㎡(18.29坪)、2F 42.00㎡(12.61坪)、延床面積 102.90㎡(30.90坪)

取材・文/たむらけいこ、写真/関根おさむ